【男主】タイムカプセルを埋めた日【オリジナル】 (ページ1)

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一話ページ1

今は何時だろう。
何も考えずに、スコップだけ持って家を飛び出してきたことを今更ながらに後悔する。
家を出た段階で十時ぐらいだろうか。だとすれば、今は十時半ぐらいか？
どちらにせよ、子供出掛けていていい時間ではなかった。

例え大人料金になったとしても、俺はまだまだ子供だった。高校生って、なんとも中途半端だ。

あまり時間が過ぎたようには思えない。
携帯を持ってくればよかったなぁ、なんて思っても、取りに戻る事は出来ない。
公園に時計があったはずだし、そこで確認すればいいか。そうと決まれば、早く行こう。

暗い道を照らすのは街灯だけで、たまに自転車に乗った人が俺を追い越していく。
会社員が通れば、こんな遅くまでお仕事お疲れ様です、と労いの言葉を心の中でかける。
学生が通れば、塾帰りかと考えて、やっぱりお疲れ様と労いの言葉をかける。

暗い道は少し怖い。受験生のときは夜遅くまで塾で勉強をしていたが、あのときは一人じゃなかった。
友達がいて、弱々しい自転車のライトもあった。騒がしい声と自転車の弱々しい灯りが、なんとも恋しい。
携帯の光があれば、少しは変わったのだろうか。

「翔」

「……拓真」

よく聞く声が聞こえ、目を凝らしてみれば、そこには昔馴染みの親友の姿があった。
黒髪に黒パーカーは暗闇では全く目立たないから、出来ればやめてもらえないだろうか。

〝連れ戻しに来たのでは〟という不安と〝親友に会えた〟という安心感が、交差する。
そんな俺の思いを知ってか知らずか、親友はニコッと微笑んだ。

「……何しに行くんだよ」

「タイムカプセルを掘りに行くんだ」

「こんな時間に？」

ドキリ、心臓が大きく鳴る。
昔からそうだった。親友の柚井拓真は勘が鋭く、いざという時に傍に居た。
これが、俺のいざという時なのは、俺自身が一番理解していた。

「……俺も付いていっていい？」

「駄目って言ってもついてくるんだろ」

「よくわかっているようで」

近付けば、拓真の右手にもスコップが握られていることがわかった。
最初から付いてくる気満々じゃねぇかこの野郎。けれど、仲間が出来たのは嬉しかった。

俺よりも若干背の小さい拓真が俺の横を歩く。
背は小さいのに、いざという時本当に頼りになるヤツだった。いつだってそうだった。俺の隣にはこいつがいた。