5話 ページ5
「あいつ、いい奴だけどさー、ノリ悪いじゃん?委員長になる前はあんなつまんない奴じゃなかったのに!」
つまらない奴、なんていう言い方をするお前の方がつまらねぇよ、とは口が裂けても言えないな。
「ちょっと......っつーか、だいぶ堅苦しいしよー。誰もお前のやってること見てねーよ、みたいな?細かい所までグチグチ言ってくるし、将来、そういう危ない事すんじゃねぇのかな、って」
誰もそこまで言えとは言っていないのだが.....。
べらべらと話し出す尾崎はとてもイキイキしていて、どことなく楽しそうだった。
人の悪口を言うと清々するというが、まさにそれだろう。聞かされている側は溜まったもんではないが。
「別にお前にそう言ってるわけじゃないって、だから、ほら.....恐い顔すんなよ」
胡麻をするように俺の顔色を伺う尾崎。
尾崎に言われて、初めて強ばっていたのだと気がついた。
あぁ、どうしてだろうな。そんなに俺自身が怒るような事を言われたのだろうか。
さっきの悪口は広瀬宛だというのに、なんというか自意識過剰過ぎて自分が嫌になりそうだ。
「お前は広瀬の事どう思ってた?」
「どう......か」
広瀬春樹は俺の友達だった。
クラス委員をきちんとこなす彼は俺なんかには勿体ない友人だった。
......俺の中では、だが。
広瀬春樹がなにを思っていたのか、それは今となってはわからない事だ。
別にわかりたいとも思わんが。
「真面目な人だった」
俺から見たあいつは模範生徒というに相応しい存在で......。
誠実が似合う男だったんじゃないだろうか。
そう答えると、尾崎はそうかと笑った。
お前から出した話題だろうがと襲いかかりたいが、そもそも俺の機嫌を直す為の話題だったな、申し訳ない。
「あ、用事あるから、そんじゃなー」
慌てたように走っていく尾崎、用事あったというのに付き合わせてしまって悪かったなぁ…...。
広瀬春樹にとって俺はどんな人間だったんだろうか。
胸のうちに潜んだそれは、やがて大きな疑問となって返ってきたのだった
そんな、心のどこかで、「やっぱり、覚えているじゃないか」と声が聞こえたような.....そんな気がした。
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作者名:朝霧 | 作成日時:2016年3月11日 23時