【男主】僕が忘れた君のこと【オリジナル】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:2,751 hit

3話ページ3

なんとなく歩いたはいいものの、もう帰るべきだろうか。

グラウンドからは運動部の叫び声、廊下からは吹奏楽部の演奏、上からは美術部の笑い声が聞こえてくる。

......ここも、負けず劣らず居にくいな。
どうせ、ここでも家でもやることはないんだ。家に帰って勉強でもしようじゃないか。

一人で帰るのは寂しい。これからずっと一人なのだから慣れないといけないっていうのに。

広瀬春樹は俺の友達だった。
笑って助け合う仲間だった。

だから、俺が彼を殺すなんてありえない。

「......なぁ」

後ろからかけられた声は、あまり元気がいいとは言えないなんとも情けない声だった。
振り返るのも面倒だ。こんなつまらないことに時間を取られたくない。

が、すぐに終わらせるには仕方が無い事だろう。

「なんだ？」

「本当に......忘れたのか？」

忘れてなんていない。もとから知らないんだから。

俺はわざとらしく大きな溜息をつき、男子生徒を横目で見る。男子生徒はただ真面目な顔で俺を見つめてくる。あぁ、とても気色悪い。

「知らない」

俺はそう言って、男子生徒で背を向ける。

男子生徒の息を呑む声。あぁ、引き止められたらどうしよう。そんな考えとは裏腹に彼は俺を追いかけてくる事はなかった。

**

.....あれ、ここはどこだ。

おかしいな。確か家へ帰るべく門を目指していた筈なんだが......いつの間にか職員室前に足を運んでいたとは。

「あれ、平木じゃん。もしかして、先生に呼び出されたの？」

そう言って話しかけてきたのは、去年同じクラスだった藤田恵だ。
人よりも少し真面目な彼女が職員室から出てきたというのには少しばかり疑問を抱く。

「.....なんとなく、来ただけだ。藤田は？」

なんとなくで職員室を訪れる生徒がいてたまるか。自分が言ったことだが、馬鹿馬鹿しく思える。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、藤田は笑みを見せ、言葉を続ける。

「そっか。そういうときもあるよね。私は、先生に呼び出されていたんだよ」

普通の事のように言う藤田。
藤田が何か問題を起こすとは考えられないし、それを自分で言うとも思えない。

.....少し、気になる。

「藤田が呼び出しとか珍しいな」

「あはは、確かに珍しいね。ほら、私って学級委員じゃない？それの仕事で呼び出されていたの」

あぁ、なるほど。真面目な藤田なら有り得る話だ。
すると、藤田はあたりを見てから、内緒話をするような小声で言葉を紡いだ。