【男主】僕が忘れた君のこと【オリジナル】 (ページ1)

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１話ページ1

誰もいない教室。少し物悲しい。

長年使われていた黒板はとても汚く、前々から掃除したいと思っていた。俺以外の奴らはもう帰ったみたいで、既に日が暮れはじめている。

潔癖症じゃないが、教室は綺麗な方がいいだろう？それが口癖の友達は、今日は用事があると言って先に帰ってしまった。

一人は寂しい気がする。俺もこんな似合わない事はしないで帰ればよかった。

「平木君」

落ち着いた声が聞こえ、顔をあげる。視界の端に担任が立っているのが伺えた。

入ってきたことにも気付けないとは.....どれだけ集中していたのだろうか。

年老いたとも若いともいえない普通の担任。確か結婚していて、小学生の娘さんがいたんだったか？
.....って、心底どうでもいいことだな。

「鍵閉めるんですか？」

「......」

黙ったままというのは気味が悪い。いつも笑っている先生が真顔っていうだけでも怖いのに。
もしかして、俺は先生を怒らせてしまったとか？いや、心当たりはない。

だとすると、聞こえなかったのだろうか。それが一番筋が通っているし、もう一度、声をかけてみよう。

息を大きく吸い、担任に同じ質問をしようとした瞬間ーーー

「ーーーお前は人を殺した」

「は？」

「罪人には罰をーーー」

「先生？」

突然のことでなにがなんだかわからない。
ただ一つ言えることは、今現在、俺は大変不名誉なことを言われているということだ。

だが、生憎な話、俺にはそういった記憶はない。即ち、これは先生の誤解だろう。

そうわかれば、やることはただ一つ。

俺はその勘違いを解かねばならない。

「先生、待ってください。なにを仰っているのかわかりませんが、僕は人を殺した事などありません」

「それを証明することは？」

「そんなの、僕が証人です。僕が僕は人を殺した事などないということを証明できます」

「.........本当に？」

そう尋ねる先生の顔が読み取れない。
可笑しい、可笑しい、なにが起こっている？俺は人を殺めた事などない。仮にあったとして、なぜ担任が知っている？可笑しい、可笑しい。

「......本当です」

声は震えていなかっただろうか。ちゃんと言えただろうか。
目を逸らしたら駄目だ、しっかり見つめないと、そうだ、しっかり見つめないとーーー

「本当に？」

「本当だ！」

俺が俺の証人だって、さっき言っただろう？
なのに、なんでこんなに不安なんだ。