カブトムシと写真 ページ7
ーーー
「あ、無一郎くんじゃん今日も可愛いね」
「………君、誰だっけ」
ぽけりとした顔をして、無一郎はAの顔を見た。かなり頑張って毎日話しかけていたが、彼は覚えていない。
「これで会ったのは10回目だね!」
「うん……?」
「天色A、無一郎くんファンの15歳だよ」
「……すぐ忘れるから」
スタスタ、先を行く無一郎に、Aは落胆した。
(覚えてもらえる日は来るのだろうか………)
半べそをかきながら、Aはとぼとぼ歩き出した。
ーー
「よくめげねぇな、おめェ」
「その声はおはぎが好きな………すみません」
「殺すぞ」
縁側で日向ぼっこをしていた時、あの特徴的な声がAの耳に入った。
おはぎが好き(甘味処のおばちゃん情報)の印象しか無かった為、つい口が滑ってしまった。
「めげない……何をですか?」
ちゅん、と鳥の鳴き声がして、Aは耳に意識を集中させる。
それと裏腹に、実弥はハァ?と口を歪ませた。
「いっつも時透を追っかけ回してるしよォ、ずっとスタコラやってて飽きねぇのか」
「飽きませんね」
即答だなオイ、と実弥が眉をひくつかせる。だが、Aにとっては事実を述べたまでなのだ。
「可愛くないですか?」
「……まぁ、世話してやらなきゃ潰れちまいそー、とは思うけどな」
「私母性本能くすぐられまくっちゃって。めっちゃ可愛いですよね」
「あのなぁ、この前なんか玄弥と同じ位置にご飯粒つけてやがってよォ。やっぱ弟っつーのは似たり寄ったりするモン…………………オイ」
にこにこ、ニマニマ、Aは笑っていた。
「ふっっざけんじゃねぇぞおめェ!!!!」
「怖いですって怖い!!」
今にも刀を抜き出しそうな手を、Aが必死で止める。馬鹿野郎、殺すぞ、うるせェんだよ!と怒号が飛んでくるが、実弥の耳は真っ赤だ。
「……さっき幸せそうな顔してましたね」
「あァ"?」
「きっきっと弟さんが大好きなんだろーなみたいな」
決してバカにしてるとかじゃなくて!ほんとに!と、Aが弁解するが、弁解にもなっていない。
ビキリ、実弥から血管の音が聞こえた。
「Aサン?ちっとツラ貸せや」
「お手柔らかに………ごめんなさいすみませんでしたぁああああ」
実弥を怒らせるとロクな事にならない。
>>>>続く
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作者名:あられ | 作成日時:2022年6月12日 13時