甘味処.肆 ページ6
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「………その時無一郎くんが柱だって知らなくてですね、あの」
「凄い出会いね、キュンキュンしちゃう」
桜餅を頬張って、薔薇の様に顔を火照らせる蜜璃。果たしてキュンキュンする出来事なのだろうか。少なくとも、A的には最悪の出会いだった。
「あの時ですか、Aさんが全身複雑骨折してた…」
「そうです。それです」
無一郎の協力も得て、やっとこさ戻ったと思えば全身複雑骨折していた、というしょーもないオチである。
「あの時無一郎くんが任務だったら死んでた」
「不幸中の幸い、ですね」
こくり、と目の前にあった抹茶を飲んだAは、綺麗な顔で団子を齧っているしのぶに目を当てた。
(お人形さんみたいだな、本当に)
それに比べて私なんてゴリラじゃないか。
自分の女子力の無さにゾッとしたAは、ぎゅーっと目を瞑ってまんじゅうを頬張った。
その時、あっ!、と蜜璃の声が耳に響く。
「もうすぐ伊黒さんとお出かけするの〜!ごめんなさい、行くわね」
赤みがかったほっぺを抑えて、蜜璃が席から立ち上がる。その姿が何とも愛らしくて、Aは自然と口元が緩んだ。
「楽しんでくださいね〜」
「またこうやってお話しようね、絶対!!」
Aが、少々語尾を強めて言う。
明日の保証がない身として、大切な人を守る身として。
パタパタと手を振る蜜璃に、Aは大きく振り返した。
「………うん。絶対ぜったい、また会いましょ!」
「そうですね、また___」
ただ、しのぶだけ
何処か遠くを見ている様な、そんな気がした。
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作者名:あられ | 作成日時:2022年6月12日 13時