運命に嫌われた青年-3 ページ4
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使用人服に着替えたAは、久藤の後をついて歩いていた。葵の件もあっての効果なのか、すれ違う使用人たちには少し見られる程度だった。まあ本人がいなくなったところで、何かを言っているのだろうが。
「——で、ここが坊ちゃんのお気に入りの中庭だ」
優しい風が頬を撫でる。風になびいて、花たちがさわさわと小さく音を奏でる。
「……ふーん、手入れは行き届いてるんですね。」
花を見て、何を思ったのか小さく、ほんの小さくだがつぶやく。その表情はどこか寂しそうだった。久藤はそれを見逃さなかった。
「……葵と、山崎が念入りに手入れしてるからな。お前も担当域になるんだ、手ェ抜くんじゃねえぞ」
これでも優しく言ったつもりだ。表情からしてそう思ってることがわかる。
「…花は、好きです。自分が頑張って手入れすれば、輝く。それが面白い。」
Aは花壇のそばでしゃがみ込み、花をいとおしそうに撫でる。そして、土に触れる。
「………土が、あってない。この土でも美しく咲き誇るが、養分が足りておらず、もっと綺麗になる可能性を潰してしまっている。土の適合性は花にとってとても大切なものです。久藤様、この花壇の土を取り換えることは可能でしょうか？」
立ち上がり、久藤と目を合わせて問うAに、久藤は一瞬ぽかんとした。この花はもっと綺麗になるのか、これ以上咲き誇ることが可能なのか。少し考え、
「それは、葵と山崎に相談しろ。俺がどうこう言えるような内容じゃねェ」
目をそらし、中庭のベンチで二人ほほ笑んでいる葵と次郎を見た。
「……へェ、子は親に似るっていうけど、まさしくその通りかもしれないな。花も同等、美しさや愛しさは似ている。葵様が育ててたのだったら、この美しさもわかる。」
ちらり。久藤の見ているほうに視線を向ける。視界に幸せそうに微笑んでる葵と次郎をしっかりととらえている。
そんな久藤と雪白を、窓から見下ろす巳影は
「……絶対に、認めない。いくら優秀だろうとΩはΩだ。」
ギッと雪白Aを睨んでいた。
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作者名：Noah-ノア- x他1人 | 作成日時：2019年3月22日 22時
