運命に嫌われた青年‐2 ページ3
1
ツカツカと靴を鳴らしながら大股で歩く。彼の名は西園寺 巳影。西園寺家の二男であり、有所正しき西園寺家の
巳影は、表には出さずに怒っていた。ひそかに、わが父である西園寺 太郎に、怒りを挙げていた。
どうしたのかといえば、この有所正しきα一族の西園寺家に、また新たにΩ——カーストでいう最底辺を雇ったのだから。Ωを嫌っている巳影なら怒っても仕方ないのだろう。率先してこの差別をなくさなくてはいけない身としても、彼のΩ嫌いは過去に関係している。誰も責められないのだ。
ダァン、と大きな音を鳴らしながらドアを勢い良く開ける。
父の部屋には、父——西園寺 太郎とその付き人、それから————
「…ッ」
ぐらり。一瞬、ほんの一瞬だがΩのフェロモンに酔わされた。だが、それも一瞬。すぐに無表情に戻り、余裕の笑みを浮かべている太郎の机の前まで行き、先ほど開けたドアよりも強く力を籠め、机を叩いた。
それと同時に
「…どーゆー、ことだよ」
低い、唸るような声。Ωなんて、なんで雇った。葵の件で思い知っただろ。番のいないΩを雇うなんて、——言いたいことは山ほどあった。だが、それは口には出さずに、先ほどの一言にその意を込めた。
「…どーゆーこともなにも、言ったとおりだ」
太郎は余裕そうな笑みを崩さず、告げる。まるで巳影を煽っているような声音。巳影はさらに強く、「葵の件で思い知っただろ。番のいないΩを雇うなんて、わが一族の恥___」
「黙れ。」
ぴしゃりと巳影の言葉を遮る。
「ガキが調子こいてんじゃねえぞ。もう決まったことだ、それにお前のそのΩ嫌い、いい加減克服しなきゃとは思っていた。絶好の機会だろ、———ギャーギャーわめいてるんじゃねえよ、二男」
にたりと笑い、巳影を煽る。巳影はチッと舌打ちをした後、太郎から目を離してΩ青年を見た。
「……認めねえからな」
青年は、巳影にそう言われてどう思っただろう。ふわりとほほ笑んで
「——私の名は雪白 A。これからよろしくお願いいたします。西園寺 巳影様」
きれいに一礼した。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Noah-ノア- x他1人 | 作成日時:2019年3月22日 22時