再会2 ページ8
和サイド
Aの様子がおかしい。
顔が赤く熱のありそうな感じだ。
夏バテか？熱中症か？
身体がしんどいのか起き上がったと思ったらまた横になってしまった。
そばに近づいてみる。あまり近づきすぎるのも気が引けて少し離れた場所に胡坐をかいて座る。
「大丈夫？夏バテ？」
A「ん？そんなとこかな。それよりこんなところで寄り道食ってて良いの？診療所は？」
熱があるのは間違いなさそうだ。
「ん？まだあと10分くらいなら大丈夫だよ。東京いるときから具合悪かったの？昨日も出かけてないっみたいだしごはんとかどうしてる？」
ちゃぶ台の上にはバウムクーヘンと飲みかけのお茶のペットボトル。
それ以外に食料らしいものは見当たらない。
A「ちょっと疲れたまってただけ。」
「ほんと？熱っぽくはない？」
A「やだー和くん。お医者さんみたいなこと言うのやめてよ。平気だってば。」
「あのさーさっきも言ったけどこの診療所切り盛りして10年も経つんだよ。立派なお医者さんなんだって俺は。」
A「島のみんなは和くんのこと和先生て呼んでるの？」
そう言われると返す言葉がない。
ほとんど皆和くんだし、中には和って呼び捨てにする人さえいる。
A「あ、その顔は呼ばれてないね。和くんて言われてるんでしょ？」
「呼び方なんてどうでも良いだろう。見た感じもしんどそうだしちょっと診させてよ。」
A「やーだ。ほらもう10分経ったよ。診療所に戻らないと。和先生のこと待ってる患者さんいるんでしょ？」
Aまでもがからかうような目で俺を見るんだからー。
時計を見ると確かにこれ以上のんびりしてる時間はなさそうだ。
「今日の夜、一緒にご飯どう？診療所終わり次第迎えに来るから。移住ブームなのか本土から若いカップルが来てカフェやレストラン開いたの。結構おいしいところあるから行こうよ。おいしいもの食べたら元気も出るから、な？」
夏バテだけではなそうなAの表情。
都会の生活に疲れて懐かしい島に戻ってきたのかもしれない。
仕事ももしかしたら辞めてきたのかも。
少しでもAの力に癒しになりたいと思ってしまう。
これは医者としてなのか幼馴染としてなのか。
それとも遠い昔に抱いていた淡い恋心なのか。
東京に行ってすっかりあか抜けてきれいになったAのことを見るたびに心がちくって痛くなっていた俺。このまま島にいてくれたらなと願っている自分がいる。
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作者名：ルパン
| 作成日時：2019年8月28日 20時
