愛は故郷にありました。 (ページ5)

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日常2 ページ5

和サイド

「140の85、ちょっと高いけどちゃんとお薬は飲んでる？飲み忘れとかしてない？」

患「ねぇ和くんさ、ちょっと様子見に行ったら？もしかしたら具合悪くて寝込んでたりするのかもよ。」

こちらの質問には答えずいまだにAの話。
確かにこの島で育った人は島みんなの子供っていう認識がいつまでもあるし
特にAは両親同時に亡くしたし。皆温かい気持ちで見守ってるんだよね。

「わかったからAのことは。血圧の薬はちゃんと飲んでるの？」

患「覚えてるときは飲んでるよー。」

自信満々に言わなくても…

「忘れんとちゃんと飲んでよー。じゃ胸の音聞くよ。」

このくらいの年代のおばちゃんは恥ずかしがらずにがばっとまくりあげてくれるのでありがたい。
思春期の子だとね、てこずるし、なんだかこっちが悪いことしてるような錯覚起こしちゃう。

「ちょっと脈飛んでるけど苦しいとか息切れするとかない？毎日暑いけどちゃんと水分はしっかり摂ってる？」

患「元気よ私は。気にして水分摂るようにしてるけどね。なんか悪い病気なん？」

「まあおばちゃんくらいの年になったらあっちこっちガタ来るからそんな心配せんでいいけど、胸苦しくなったり息切れしたりするようなすぐまた来てよ。」

患「なんかお医者さんみたいなこと言うね、和くん。」

「お医者さんなんですーー。もう10年もここでやってるでしょ。」

患「そやったね、そやった。ははは。ほなAちゃんのこと頼んだよ。」

「わかったから。ちゃんと水分補給しっかりしてよ。」

肩をバンバンと強めに叩いて出て行った中谷さんの後ろ姿に声をかける。

Aかー。
なんで今頃帰省なんだろう。遅めの夏休みか？でも一人で。しかも戻ってきてから外出してる様子もないのか。
そう言われると少し心配になる。熱中症で倒れてるとかじゃなければ良いけど。

往診の帰りにでも寄ってみるか。
久しぶりにあの坂道上るのか。懐かしいな。中学高校と下校が同じ時間になればよく一緒に帰ったよな。俺の家がもう少し坂の上にあったからAのこと家まで送っていく感じでなんだかそれが誇らしくて嬉しかったのを覚えている。

今はもう診療所に引っ越しちゃったからあんまりあっちの方向に行かないんだけど。