目覚め1 ページ23
和サイド
「ありがとう。お疲れさまでした。遅くなったけど帰ってゆっくりして。俺がAのこと見るから今夜は。」
清「先生お疲れじゃないですか？」
「ん？不思議と疲労感はないよ。オペ後って気分高揚して寝れないしね昔から。」
清「じゃお言葉に甘えて失礼しますね。Aさんの食事どうしましょうか。」
なんせ島で唯一の診療所。
入院の患者さんがいるときは清水さんが看護から食事までほぼすべて担当してくれる。
「本当は食べてほしいけど明日は様子見ようかな。身体もだけど精神的なものもあるだろうしとりあえず栄養は点滴で補うことにする。」
清「わかりました。お疲れさまでした。」
頭を下げて部屋から出て行った。
Aが眠っているベッドのすぐそばに椅子を引き寄せてとりあえず腰を下ろす。
目が覚めたらなんて声をかけようか。
麻酔から目を覚ますまではもう少し時間がかかるだろう。
痛み止めの準備をしておいたほうが良いだろうな。
今夜はきっと痛みとの闘い。
つい１週間ほど前にも経験したであろう痛み。
東京の病院ではだれか付き添ってくれる人はいたのだろうか。
それともたった一人で苦しんだのだろうか。
酸素マスクがしっかり口と鼻をカバーしていることを確認してからいったん部屋を出る。
薬品棚から筋注ですぐに対応できるようにシリンジを3本用意しておく。
朝まではおそらくこれで大丈夫だろう。
トレイに載せてまたAの眠っている部屋に戻る。
酸素マスクが呼吸の度に白く曇るのを見てなぜか安心する。
俺はAの大切な人になれるだろうか。
布団の中にそっと手を入れてAの手を握る。
両親を亡くしたと島の人から聞いたとき本土の大学で猛勉強中だった。
お葬式にも参列しないままだった。
どんな気持ちだっただろうか。絶望を味わったのだろうか。
そして今どんな気持ちで島へ戻ってきたんだろうか。
力を込めて手を握るとかすかに動いた気がした。
そろそろ目覚めるかな。
でも目が覚めると痛みも感じてしまうからこのまま少しでも長い間眠っていてくれたらと願う。
顔を見つめていると瞼が動いている。目覚めそうだな。
「A、A、気分はどう？苦しかったり痛かったりしない？」
まだぼんやりしてるみたいだ。
「こっち見て。お腹の中ちゃんときれいにしたからもう大丈夫だよ。ここでゆっくりして身体治そうね。」
A「和くん...」
「ん？ここにいるよ。」
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作者名：ルパン
| 作成日時：2019年8月28日 20時
