術後の経過3 ページ29
和サイド
後悔はしてない、人生の大きな選択肢がひとつなくなっただけ。
大きな決断をして実行したA。
当たり前だけど子宮を取り出したら二度と戻すことはできない。
Aはしっかりした口調で言ったけれど表情はどこかもの寂しげで。
やはり清水さんが言っていたように納得できてなかったのか。
「大丈夫か？」
もう一度聞いてみる。
A「大丈夫って何が？痛みはだいぶ引いてきたよ。動いたらやっぱりまだしんどいけど。でもゆみちゃんがおいしいごはん作ってくれるから少しは元気になったかな。」
「そうじゃなくて。」
話を逸らそうとする。
A「疲れたからもう寝ても良いかな。今日は頑張ってたくさん歩いたからさ。」
無理に笑顔作らなくてもいいのに。
「そっか、ごめん。長居しちゃったね。寝る前にもう一度診せさてくれる？」
A「何度も見なくてもおんなじだよ。心配性なんだね。」
「心配性なんじゃなくてケアの行き届いてるドクターなんです。ほら横になって。」
A「はーい。」
病衣の前をはだけると恥ずかしそうに視線を逸らす。
毎日何度もやってるのに慣れないのかな。
俺が興味あるのは傷口の状態と全身の状態それだけなんだけどな。
そう思いながらAの滅菌ガーゼでおおわれている下腹部を露出させる。
あ...
なんだろう。一瞬ドキっとした自分がいた。
Aの肌に触れまたドキっとする。
もしかして俺。
一瞬頭をよぎった気持ちを抑え込む。
「少し押さえるよ。」
A「うん。触って何がわかるの？」
「うん？硬くなってないかなとか、触って痛みがないかなとか、熱帯びてないかなとか、いろいろわかるんだよ。」
A「ふーん、すごいんだね。」
「あ、やっと俺のことちゃんとした医者だって認めてくれたの？」
A「やっとでどういうこと？ちゃんと立派なお医者さんだって思ってたよ。」
「ほんとかなー。怪しいもんだよ。うん、大丈夫そうだね。じゃあお休み。何かあったら遠慮なく呼んで。しばらくは診察室で仕事してるから。また見に来るね。」
A「ありがと、お休み。」
目を閉じたことを確認してそっと部屋を出る。
手術した病院は教えてくれたってことは連絡を取ってカルテを手に入れても良いってことかな。
いずれにしても大学病院相手だと電話一本ではいどうぞって送ってくれるとは思わないけど。
でも執刀したドクターもフォローアップができずにいて困ってるはず。
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作者名：ルパン
| 作成日時：2019年8月28日 20時
