梅雨の日-3 ページ11
彼女が自分のことを話してくれたあの日。
僕は、自分がすごく情けなくなった。
Aには、お父さんとお母さんがいない。
いや、正確には、覚えていない。
Aが生まれて間もなく、ご両親は事故で亡くなったそうだ。
まだ、言葉も覚えないうちに親をなくした彼女。
それからは、母方のおばあちゃんが、
ずっと唯一の家族。
そんなおばあちゃんも、去年、肺を悪くして入院することになってしまった。
…今は、一人でおばあちゃんと暮らした家に住んでいるそうだ。
『お父さんとお母さんの写真、今でもよく見るんだけどね、いまいち、実感が湧かないんだぁ』
眉毛を下げて、困ったように口角を上げる。
そんな彼女が、健気で、痛々しくて。
『友達にも、よく言われる(笑) 家族の写真見たがりすぎ！って。変だよね』
ハハッと空笑いする彼女。
僕はいてもたってもいられなくて、その細い肩を抱き締めた。
『…オッパ？』
SW「ごめん」
『なんでオッパが謝るの』
SW「写真、見せてあげられなくて」
『そんなの…』
SW「僕は、血がつながってないんだ。父さんと、母さんと。」
僕も、本当のことを話した日。
君は少し驚いたように体を震わせて、
やがて温かい涙が僕の肩を濡らした。
それから僕たちは、
抱き合ったまま、二人で一緒に少し泣いた。
何が悲しいのかもわからずに。
それでもあの時、確かに僕らの中の
何かが、共鳴していた。
…君に、もっと近づけた気がしたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りり(プロフ) - このお話大好きです。inceptionの曲が大好きだしこのお話も大好き。何回も読み直してます。ソンファ早く目覚めさせてあげてください！ (9月20日 9時) (
レス) @page26 id: 8fa7639a9a (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - すごく感動しました。映画を観ているような気持ちになりました、、続きが出ることを楽しみにしています😭 (9月14日 2時) (レス) id: 99e62114f5 (このIDを非表示/違反報告)
M - inception聞くたびにこのお話を思い出してしまいます🥲もし、まだこちらのお話を書く気がありましたら是非お願いします。ずっと続き楽しみにしてます（涙） (2022年6月18日 2時) (レス) id: 4253dde426 (このIDを非表示/違反報告)
えたさん - すごく面白かったです！続き楽しみにしてます！ (2021年10月8日 0時) (レス) @page17 id: 1f8ead38d8 (このIDを非表示/違反報告)
ミル(プロフ) - すごくすごく面白かったです！続き楽しみに待ってます、更新頑張ってください^^ (2021年6月21日 22時) (レス) id: 8efb4b8ab9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ren | 作成日時：2021年2月24日 22時
