149話 ページ49
そんな顔。
慧ちゃんが言ったその言葉の真意。それはきっと、この泣き腫らした顔のことではなく、暗くて晴れない私の表情を指している。泣くなら泣く、笑うなら笑う、我慢するなら我慢する、中途半端をするなと言いたいのだ。
「誰もAの不安気な顔を見たい人はいないよ。」
そりゃそうだろう。私だって、幼馴染の不安気な顔なんて見たくない。だから...
「ごめんね、でも、本当に何でもないの。昨日、あの後も特に何も無かったよ。ちょっと寝る時間が増えただけで、こんなにも目って腫れちゃうものなんだね。」
泣かない。そう決めたのだから。笑え。何があっても。
「...そう。...俺もあるよ、寝過ぎて目が腫れたこと。結構しんどかったりするよね。」
私の返事に、慧ちゃんはそう答えた。
まさか慧ちゃんがまんまと騙されてくれた、なんて思ってはいやしない。私に合わせて返事をしてくれただけだ。そんなことは、幾ら馬鹿な私でも分かる。慧ちゃんは、私の選択を尊重してくれたのだ。
「それで、何か用でもあったの?」
「ああ、そうそう。これね、俺が1年生の時に使っていた参考書なんだけど、俺はもう使わないし、Aの役に立てばと思って。」
と言って慧ちゃんが差し出してきたのは、数学の参考書であった。昨日今日と休日で勉強から離れていたせいで、その参考書によって気分が重くなる。
「うええ〜、数学...」
「あはは、絶対その反応すると思った。まあ、無理して手をつけなくてもいいよ。やりたくなった時にやりな。」
きっとそんな日は来ないと思う。仮にあったとすれば、次の日は大雪でも降るだろう。
「でもまあ、夏休み明けにはまたテストがあるし、数学も克服しなきゃだね。」
そう、夏休みが明けた次の日にはテストがある。自称進学校の嫌なところだ。
「じゃ、あんまり長居するのもあれだし、俺は帰るわ。目、冷やすなり何なりしておきなよ。」
そう言うと、慧ちゃんはドアの方へと足を運ぶ。
彼は優しい。自分はきっと気になっているはずなのに、根掘り葉掘り聞こうとはしない。本当はきっと、心にモヤモヤを残しているのに。
「慧ちゃん、ありがとう。」
それがどれに対してのお礼なのかは分からない。踏み込まないでくれたことに対してなのか、参考書をくれたことに対してなのか。だけど、
「頑張れよ。」
それは、彼も全く同じだった。
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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです!以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます!心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます!お互い、体調には気を付けましょうね(笑) (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します! (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね! とても 嬉しいです! 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな? 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです!なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい!更新頑張ってください! (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2017年5月29日 11時