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148話 ページ48

その向こうは見てはいけない。見る資格もないの...



「なに、カーテンを開けちゃいけない理由でも...」



その時、慧ちゃんと目が合った。慧ちゃんは私の顔を見ると、途端に顔色を変えた。



「どうしたの...その目...」



目の腫れに気付かないわけが無いし、質問してこないわけもない。そんなことは分かっていたけど、見られるとなると、惨めでたまらなかった。



「目...ああ、やっぱり腫れてる?何か腫れぼったいなと思ったんだよね。今日はぐっすり寝たからかな。寝過ぎて目が腫れるってこともあるじゃん?」



誤魔化すにも必死だった。慧ちゃんの視線が突き刺さって痛い。まじまじと、私の顔を見る慧ちゃんと視線が何度もぶつかり合って、冷静さを保つので精一杯だ。



「いや、冗談抜きで真剣に聞いてんだけど。」



私の白々しい演技では誤魔化し切れなかった?

慧ちゃんは訝しげに私の様子を窺う。私は、突き刺さるような彼の視線から逃れるように、顔を俯かせた。



「昨日、あの後何があった?」



と、慧ちゃんは問い続ける。

言えるわけがない。私に楽しい時間を与えてくれたその後に、あんな事があっただなんて。昨晩のことを思い出すと、泣き枯らしたはずの涙が再び溢れ出しそうで、私には首を左右に振るしか術はない。顔を上げれば、再び涙が溢れ出しそうで、声を出せば、きっとその声は震えていて、私はまた、慧ちゃんを困らせてしまう。



「...大ちゃんでしょ。」



その名前が彼の口から出されて、私はグッと、全身に力を入れた。

反応しちゃだめだ。大貴とは何も関係がない、そう思わせなければならない。私は無言で首を振り、否定をする。



「隠そうとしたって、誤魔化そうとしたって、俺には分かるよ。」



何を根拠にそんなことを言うの。



「Aが泣く時は、大ちゃんのことで何かあった時だから。」



そんなことはない。と、否定しようとするも、思い返せば、正しく慧ちゃんの言う通りだった。

大貴から付き合うことを報告された後、慧ちゃんの誕生日を祝いに行った時、保健室で光先輩と話した時、そして昨日。全て、大貴が関係している。

駄目だ...どうして全部慧ちゃんには見抜かれているの。どうして慧ちゃんは知っているの...



「Aが泣かないって決めているのなら、それでいいと思うよ。だけどもし、仮にもそう決めているのなら、そんな顔をしていちゃ駄目だよ。」

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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです!以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます!心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます!お互い、体調には気を付けましょうね(笑) (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します! (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね! とても 嬉しいです! 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな? 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです!なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい!更新頑張ってください! (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2017年5月29日 11時

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