146話 ページ46
｢Aは大人だな。｣
と、大貴は言った。
私のどこをどう見てそう思ったのだろうか。こんなにも我儘で、意地っ張りで、嘘吐きな奴が大人なわけがない。
｢まあ、大貴よりかはね。｣
だけど、大人でいなければならないのだ。いつまでも、ぐずぐずと甘えているだけの子どものままでいるわけにはいかないから。
｢さ、そろそろ本当に帰ろうか。｣
私は重い腰を上げながら、大貴にそう促した。
｢次、こうして過ごせるのはいつになるかな。｣
私に続いて立ち上がった大貴が、小さな声で呟いた。返事を返すべきか否か、一瞬迷いはしたものの、私は返事をすることにした。
｢どうせすぐ来るでしょ、そんな日。考える程のことでもないって。｣
分かっている。そんな日が来ることは無いということくらい。
｢そうだよな。｣
と、返事をした大貴は微笑んでいた。
馬鹿...本当、大貴は何も考えていない。そんなに簡単なことじゃないのに。
｢それじゃあ、帰ったら早く寝なよ。｣
そうしてまた、私は良い幼馴染を演じるのだ。
大貴が自宅へ向かうのを見送り、私の視界から消えた途端、私の目からは涙が溢れた。家に入り、自分の部屋に駆け込むと、すぐさま窓のカーテンを閉めた。荒れる息を整えてゆっくりと深呼吸をする。
馬鹿だ...
やっと本心を口にすることが出来たのに、それすらを自分で潰してしまった。あの時あの場で、そのまま本心を語り続けていたら、ここまで自分を苦しめることにならなかったのではないか。本当の気持ちを全て話してしまえば、スッパリと気持ちに諦めがついたのではないか。色々な念が私を襲った。
ちらっと、カーテンの隙間から隣の部屋を覗くと丁度、部屋の明かりがつけられたところだった。私は慌ててカーテンから顔を離し、窓に背を向けた。
｢どうしてこんなことになっちゃったの...｣
ズルズルと、背を壁に這わせたまま 窓の下のベッドへ崩れ落ちる。呟いた言葉は誰の耳にも届かない。今度こそ本当に終わりだ。私は大貴に酷いことを言った。今度こそ、大貴は何か思ったに違いない。
泣いたところで、後悔したところで、もうどうにもなりはしない。今までの時間は戻ることはないし、取り戻すことも出来やしない。
今までの時間は過去に過ぎない。もう、何もかも、取り戻すには遅すぎた。
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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです！以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます！心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます！お互い、体調には気を付けましょうね（笑） (2018年7月22日 13時) (
レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します！ (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね！ とても 嬉しいです！ 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな？ 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです！なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい！更新頑張ってください！ (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2017年5月29日 11時
