138話 ページ38
私が質問をしても、すぐに彼からの返事はなかった。それに対して苛立ちなどはない。慧ちゃんの反応は異常だった。
あの時の、純粋に花火を楽しんでいた姿を私に見られていたなんて思ってもいなかったようで、慧ちゃんの表情は驚きで満ち溢れていた。私としても、まさかそんな反応をするなんて思っておらず、対応に困ってしまっている。触れてはいけないことに触れてしまったのだろうか。
「何か気に障るようなこと聞いちゃった...?」
こちらが質問をしたからには、慧ちゃんが答えてくれないと話が先に進むことはないのだが、それ以前に場の空気に耐えられなくなった私が、何とか空気を変えようと思い口を開いた。
だけど、彼は尚も口を開かずにいた。
何が彼をそうさせているのか。どうして何も答えないのか。ますます重くなる空気に、私の限界は越えていた。一言挨拶をしてこの場から走り去ろうか、等と考えていた矢先、
「花火は嫌いだよ。」
と、ようやく彼が口を開いた。しかし彼の回答は、先の彼の姿とは正反対のものだった。
「小さい頃はね、好きだったんだよ。でもどうしてかな...いつからか、気が付いた時には嫌いになっていたんだよな。」
と、彼は言った。ならば、どうしてあの時、あんな顔をしていたの。私の中に生まれた疑問はそれだけだった。
「だけど、さっき見た花火は何故か嫌いにはなれなかった。むしろ、綺麗だと思ったくらいだよ。」
そう言った慧ちゃんの表情はとても穏やかだった。
「だから、今日はありがとうな、A。Aが光たちの誘いに乗ってくれなかったら、そう思うこともなかっただろうから。」
と、言って、彼は微笑んだ。
「別に、お礼を言われるようなことはしてないよ。まさか慧ちゃんにも嫌いなものがあったとはね。だけど、それが克服出来たのなら私も嬉しい。来年も見れたらいいね。」
そうこう話をしている間に、私達は自宅まで帰ってきていた。慧ちゃんの家の斜め向かいに私の家はある。その時、ふとあるものが目に入った。
慧ちゃんの家の向かい、私の家の隣には大貴の家がある。その二階のとある部屋、すなわち大貴の部屋の電気は消えていて真っ暗だった。
もう22時回るけど、まだ可奈子と一緒にいるのだろうか。大貴ってば、随分楽しみにしていたし、当たり前だよね。
ふとしたことから、大貴のことを考えてしまう。考えたところで無意味だと分かっているのに。
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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです!以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます!心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます!お互い、体調には気を付けましょうね(笑) (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します! (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね! とても 嬉しいです! 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな? 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです!なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい!更新頑張ってください! (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2017年5月29日 11時