117話 ページ17
また今度。
先輩の言ったまた今度というのは、果たして本当に訪れるのだろうか。先輩はその言葉を本当に守る気があるのだろうか。責任を、持つ気があるのだろうか。
｢約束するよ。｣
先輩は、えらく真面目な顔で言った。私は黙って頷く。というより、そうせざるを得なかった。
いつも笑顔を向けてくれる先輩がそんな表情をすることに、ただならぬものを感じたからだ。いつか話してくれるというのなら、今はその言葉を信じよう。
｢ところで先輩。私が言うのも何ですけど、式の方はサボっちゃって良かったんですか？｣
結局、先輩は私をここに連れて来てからもこの場を離れることはなく、終業式、加えてその後のHRをサボっている。
｢大丈夫大丈夫。ちゃんとここにいることは伝えてあるし。｣
と、先輩は余裕を持った笑顔を見せた。しかし、私が思うにそんな余裕な気でいて大丈夫なのだろうか。
｢でも先輩、私の付き添いってことになっていますよ？先輩自身が体調不良っていう風には伝わっていないんじゃないですか？｣
体調不良と言っても、それもあくまで仮病なのだが。先輩はそれに気が付いたのか、直前の態度とは一変させ、あたふたと動揺をし始めた。
｢ま、まあ、大丈夫っしょ！佐倉ちゃんが何とかしてくれているはず！｣
と、先輩は自分に言い聞かせるように言った。
先輩の中で先生はよほど信頼度が高いようだ。しかし、先輩は多分重要なことを見落としている。あの先生は、嘘つきが嫌いなのだ。あの人が、わざわざ自己嫌悪に陥るような行動を取ったりはしないだろう。つまり、あの人は嘘を吐かない。そして、その私の読みは見事に的中した。
｢あ、佐倉ちゃん、おかえり。｣
終業式が終わったのか、先生は保健室に戻ってきた。
｢有村さん、体調は良くなった？｣
｢はい、おかげさまで。｣
と、返す私に、先生は持ち前の大らかな笑顔を私に向けた。
｢そうだ八乙女くん。担任の福田先生があなたのことを心配していたわよ。｣
担任、という言葉が佐倉先生の口から出ると、先輩は顔を強ばらせた。
｢上手いこと誤魔化してくれた？｣
やはり、先輩は先生のことを信用しているらしい。けれど、先輩は先生の本質を見抜いていないのだ。
｢ちゃんと伝えておいたわ。身振り手振りで大袈裟に体調不良を訴えるくらい、八乙女くんは元気でしたよ。今頃保健室で涼んでいるでしょうね。って。｣
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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです！以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます！心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます！お互い、体調には気を付けましょうね（笑） (2018年7月22日 13時) (
レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します！ (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね！ とても 嬉しいです！ 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな？ 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです！なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい！更新頑張ってください！ (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2017年5月29日 11時
