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116話 ページ16

先輩の人懐こさには驚かされたが、しかし、今はそれよりも気になることがあった。それは、先輩は何を見ていたのか、ということだった。周りのことが見えなくなる程にまで、先輩は何を見ていたのか。何が先輩をそうさせたのか。それを確かめたくて、私は先輩がずっと見ていた方へと視線を向けた。



「あ...」



そこにあったもの。それは、小さな古びたベンチだった。ここに来る前、私が腰掛けていた、中庭にある、木々の下に備えられたベンチだ。まさかここから見えていただなんて思わなかった。

先輩は、ずっとあれを見ていたのだろうか。だとしてもどうして?偶然ここから見えたから見ていただけ?それとも、何か意味があって見ていた?



「いのちゃん」



光先輩がポツリと呟いた。窓の外に見えるベンチに目が釘付けになっていた私の視線が先輩へと移る。先輩はまた、窓の外のベンチを見ていた。

どうして急に慧ちゃんの名前が出てきたのだろうか。先輩の視線の先よりも、先輩の言葉の方が気になって私は先輩を凝視する。



「いのちゃんはどうしてあそこに居たんだろう。」



その表情と声色からは、懐疑と不安の念が感じられた。私はもう一度、視線を外に見えるベンチへと移す。そして、あの場所で慧ちゃんが私に言った言葉を思い出す。



「お気に入りの場所。」


「え...?」



私の呟きに、先輩が反応する。



「ここは俺のお気に入りの場所だ、って、慧ちゃんは言っていました。外に出たついでに、少し涼んでいこうと思った、とか何とか言っていましたけど...」



そんな単純な理由であって、きっと、先輩が思い詰めるような大したわけがあって、あの場所を訪れたわけじゃないと思う。



「そっ、か...」



私の言葉を聞いて、先輩は頷いた。私の言葉を聞いて、何かを納得した...というよりは、納得させるようにして。

しかし、先輩の表情は未だ不安気だ。それはどうしてだろう。



「ま、いのちゃんがそう言うんだったら、そういうことでいっか。」



と、言うと、先輩は立ち上がって大きな伸びをする。私には、先輩の言ったことが理解出来なかった。



「先輩、それ、どういう意味です?」



慧ちゃんがそう言うんだったらって...先輩は何か心当たりでもあったもだろうか。そしてそれが外れた、ということなのか。



「んー...また今度、教えてあげる。」

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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです!以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます!心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます!お互い、体調には気を付けましょうね(笑) (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します! (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね! とても 嬉しいです! 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな? 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです!なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい!更新頑張ってください! (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2017年5月29日 11時

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