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115話 ページ15

私は二人に背を向け、目を強く瞑って平常心を取り戻そうとした。その間に、倦怠感や頭痛のせいもあってか、私は眠りに落ちていた。

目が覚めた時、眠る前まで騒がしかった教室は恐ろしい程の静寂に包まれていた。だから私は目が覚めた瞬間、ここがどこで、自分がどういう状況にあるのか理解することが出来なかった。和気藹々と喋っていた先輩と先生の声は聞こえない。

ベッドから身体を起こし、ベッドを囲むように取り付けられてあるカーテンを開く。私が起きている時は、このカーテンは閉まっていなかった。ということは、二人のうちどちらかが閉めてくれたのだろう。そんなことを考えながらカーテンを開ききると、窓の側に光先輩の姿が見えた。

先輩はわざわざ椅子を窓の側まで移動させて、そこに腰を掛けて窓の外を見ていた。その表情は、普段の先輩からは窺えない程に哀愁を帯びていて、何かを懐かしむようなそんな表情をしていた。

先輩の姿形こそは保健室にあるけれど、意識だけはここにはなかった。先輩の意識は窓の向こう側にあったのだ。だから、私がカーテンを開けても、先輩がその音に反応することはなかった。私はベッドから立ち上がり、静かに先輩の元へと近付いた。



「光先輩...」



私は恐る恐る声を掛ける。何を恐れてか、と問われればはっきりと答えれないが、ただ、先輩の表情からただならぬ様子が窺えたが故のことだ。流石に真後ろから自分の名を呼ばれれば意識がこちらに引き戻されたのか、先輩は後ろを振り向いて私の顔を見る。



「ああ、Aちゃん。おはよう、よく眠れた?」



そう言う先輩の表情はさっきまでとは一転し、とても穏やかであった。



「はい。気分も身体も、大分楽になりました。」



と言っても、時計を見る限り、私が眠っていた時間はわずか20分程度のようだ。その20分間で、先輩に何かあったのだろうか。



「佐倉ちゃんは体育館に行ったよ。」



突如、先輩の口から出た名前に、私は首を傾げる。佐倉ちゃん...?それは一体誰のことなのか。



「ああ、ごめんごめん。佐倉ちゃんは保健室の先生こと。」



何歳も歳上の先生のことをそんな風に呼ぶことに、私は驚きを隠せなかった。先輩に躊躇の念が無いことにも驚きだ。どうやら先輩は人と仲良くなることが上手いらしい。先生のことをちゃん付けで呼んだり、私の担任のことも略称で呼んだり。

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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです!以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます!心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます!お互い、体調には気を付けましょうね(笑) (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します! (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね! とても 嬉しいです! 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな? 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです!なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい!更新頑張ってください! (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2017年5月29日 11時

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