114話 ページ14
｢熱射病だね。水分も沢山摂ったし、寝ていれば良くなると思うよ。｣
光先輩に連れてきてもらった保健室のベッドの上で、私は横になっていた。保健室の先生に渡された保冷剤を顔や頭に当てて、身体に残る熱を冷ます。
｢すみません...｣
熱射病といっても、私は軽症なのだろう。倦怠感はあるものの、頭痛は大分収まった。
｢謝ることはないのよ。今日は暑いからね。長時間の炎天下での作業に体がついていかなかったんでしょう。｣
先生は、謝る私に優しい言葉を掛けてくれる。保健室の先生は中年の女性で、笑顔や対応、言葉が優しく包容力があり、生徒達からは好かれている存在だ。
｢それで、あなたはいつまでここにいるつもりなのかしら...八乙女くん。もう式は始まっていると思うのだけど。｣
笑顔を浮かべる先生の口から出た言葉の矛先は、私をここに連れてきてくれた光先輩であった。先輩はボーッと見ていた窓の外から視線を外し、先生の元へ歩み寄る。
｢いやあ、実は俺も今ちょっと腹痛くて...あれ、頭痛もするし眩暈もするなあ。｣
と、先輩は身振り手振りで大袈裟に体調不良を訴える。果たしてそれが本当かどうかは疑わしいが。
｢あら、嘘が下手くそだこと。わざとらしい。嘘つきは嫌いよ。｣
先生は笑顔を崩さず、先輩に言葉を突きつけた。
｢冗談だって。今更行くの面倒臭いじゃん？体育館は暑いし。｣
先輩は先生の言葉に怯むこと無く、笑って言葉を返す。
｢初めからそう言えばいいものを。別に追い返したりしないのに。｣
二人は仲が良いのか、和気藹々と会話を弾ませる。しかし、私はその二人の会話の中に入っていくが出来ずにいた。身体が怠いからとか、頭痛がするからとか、それだけが理由じゃない。むしろ、そんなものは理由にならない。
恐怖心。恐れ慄いたのだ。先生の言葉に。先輩に向けて放たれたはずの先生の言葉に。
嘘つきは嫌い。
先生のその言葉が、私の胸に突き刺さった。先生は何も知らない。あれは私に向けて発せられた言葉じゃない。けれど、私の心を乱すには十分だった。
それは、私を否定されたようなものだった。私という一人間を。疎外感を感じずにはいられなかった。同時に、自分の気持ちを直球に口にする先生に恐怖心を抱いた。私とは正反対の先生。それは、かつての自分を見ているかのようだった。
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瑠璃瑚(プロフ) - ラベンダー畑さん» ラベンダー畑さん お久しぶりです！以前もコメントくださりましたよね、ありがとうございます！心を抉られるその感覚が伝わっているのであれば、この小説の主旨が伝わったということで嬉しいです。ありがとうございます！お互い、体調には気を付けましょうね（笑） (2018年7月22日 13時) (
レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - 愛奈さん» 愛奈さん ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！もっと沢山の方に読んでいただけるよう精進します！ (2018年7月22日 13時) (レス) id: 51c3decb4a (このIDを非表示/違反報告)
ラベンダー畑(プロフ) - 再開されてたんですね！ とても 嬉しいです！ 細かい所とか 覚えてないから また 読み直そうと 思います 大貴の鈍感さが 一つ一つ 心 抉られます 主人公 可哀想 でも 告る方が 楽になるんじゃないかな？ 更新 楽しみです 猛暑のなか 体調 気をつけられて (2018年7月21日 19時) (レス) id: ffe5259ca3 (このIDを非表示/違反報告)
愛奈(プロフ) - このお話、とても好きです！なんで赤星ではないんだろう。もっと多くの人に見てもらいたい！更新頑張ってください！ (2018年7月21日 16時) (レス) id: 6fc34b8758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2017年5月29日 11時
