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「冗談ですよ!冗談!」
慌てる様子もなくそう言ってみせるAはやはり変わり者だ。隊内で俺のことをここまで雑に扱う奴など他に見当がつかない。
「お礼を言われる程ではありません。師範が元気ならそれで十分です!」
おーおー、言ってくれるじゃねェか。べったり笑顔なんか見せやがって。輝くAの瞳が眩しい。
「おはぎ、ありがとうございます。」
「あァ。」
俺の扱いは雑なのに、律儀な面だけは揺るがねェんだよなァ。
「綺麗な緑だなァ。」
「へっ…?」
「ッ…?!」
思わず口から漏れた言葉に、自分でも驚きが隠せずグッと後ろに身を引く。
「何ですか?緑?」
俺が口にした緑が何か理解出来ないAは、その顔をズイッと俺に近づけては「どの緑ですか?どこにあるんです?師範?」と問う。
あァ、緑が近ェ。
「Aの…」
「私の…?」
「Aの、瞳が…、瞳の色がッ、綺麗な緑だと思っただけだァ!」
喉に突っ掛かった言葉を勢いに任せて全て吐き出してしまえば、顔に熱が集まるのを感じた。
「私の…瞳の…へっ?!ちょッ!!?」
自分が何を言われているかを理解したAは、次第に顔を赤くさせ小刻みに震えている。
「いきなり何を言うんですか!!」
「お前が言えっつったんだろォがァ!!」
「そうでしたね!すみません!!」
Aは更に顔を真っ赤にさせて、手で顔を覆った。
クソッ、何をそんな照れてやがんだァ!こっちまでこっぱずかしくなっちまうだろォが!!瞳の色を褒めただけでこんなになるなんて思わねェだろォ!俺も俺でらしくねェことを。
「やっぱり今日の師範は変です!いつもは血も涙も無い枯渇人間のくせに!!」
「オイコラもういっぺん言ってみろォ!」
「きゃー!!暴力反対!職場における上司から部下への暴力行為は立派な犯罪です!!」
やっぱりコイツは可愛げがねェ。少しでも焦りを見せたのが馬鹿らしい。
「あ、でも、」
「あ゛ァ゛?!まだ何かあんのかァ?!」
ギロっと音が立つ程に思いっきりAを睨みつけるも、Aはそれに怯まず口を開いた。
「その、嬉しくないことはないです…」
普段に比べて少し小さな声で、Aは言った。
今、何かに落ちた音というか、新たな扉が開けた音がした気がする。
「…素直じゃねェ奴だなァ。」
「いや、どの口が言ってんすか。」
前言撤回。
俺は何にも落ちてねェし、新たな扉も開いていねェ。
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瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます!>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ブフッ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ!誰でもミスはありますよ!これからも頑張ってください! (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます!お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2020年1月11日 14時