飼い犬に手を噛まれる【不死川実弥】

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問題発生です。



「包丁が、握れない…」



夕飯を作るのに包丁が握れない。なんと致命的。水柱様と繋がっている手が左手だったらよかったんだけど、生憎右手が繋がっていて、そして私は右利きなのである。流石に包丁を左手で扱うのは怖い。



「犬飼、俺がやろう。」



水柱様が包丁を横取りし、続いて聞こえたダンッという荒々しい音。



「いや怖っ！てか雑？！料理やったことあるんですか？！」

「あるに決まっているだろう。」

「そうは見えないんスけど…」



いやいや、幾らなんでもこのまま水柱様に任せるのは怖過ぎる。ここはやっぱり意地でも左手で…いやでも、流石に魚を捌くのに左手で包丁、しかも片手は不自由じゃ無理がある…



「危なっかしい音立てやがってェ…何してんだァ。」

「師範！」



いつの間にか、先の音を聞いた師範が水柱様と私の後ろに立っていた。師範は水柱様と私の間にから顔を覗き込ませると、俎板の上を見て「あァ？」と声を漏らした。



「何作るつもりだァ？」

「鮭大根を…」

「珍しいなァ。」

「ええ、まあ…」



水柱様の要望なので。



「退け。俺がやる。」

「え！？いやでも…」

「うるせェ。今のお前らに任すのは危なかし過ぎる。手でも切り落とされちゃあ面倒だろーが。」



いや、昼間の稽古で真先に手を切り落とそうとしてきたのは何処のどいつですか。



「俺が作る。Aは手順の指示出せェ。」

「は、はい！」

「不死川が俺の好物を…」

「はあ？！お前の好物だと？！」



自分が作ると言った料理が水柱様の好物で要望であると知った師範はあからさまに嫌そうな顔をした。水柱様は…ムフフとどこか嬉しそうに笑っている…のか？



「いいじゃないですか師範！客人はもてなさなきゃ！」

「けっ！招いた覚えはねェぞ！」

「師範！」

「だァーうるせェ！作ればいいんだろ？！」



この屋敷に客人が来るなんて珍しい。普段作らない料理も作れるし偶にはいいじゃない。と思ったのは師範には内緒にしておこう。





「良かったですね、水柱様！」

「不死川が俺のために…美味い…」

「お前のためじゃねェ！クソが！あと食い方汚えんだよ！」

「師範！食事中にクソなんて言わないでください！」



それにしても左手で箸を扱うのは難しいな。思うように掴めなくて苛々する。師範が作ったご飯、ちゃんと食べたいのに。ああもう右手さえ使えたら…



「あれ、右手…離れた…？」



血鬼術、解けました。ご飯美味しい。

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