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「本当に申し訳ありませんでした…」
真っ赤に染まった塵紙を真新しい塵紙に交換しながらおずおずと陳謝する。
「気にすんなァ。」
「ですが…」
師範は顔を俯かせたまま言った。
「あの状況で咄嗟に不死川の顔面に蹴りを入れるとは犬飼も容赦が無いな。」
「水柱様?傷を抉らないで頂けます?」
稽古中、地面に倒れ込んだ水柱様と私に容赦なく斬りかかろうとする師範を止めるために、迫りくる師範の顔を私は勢い余って蹴り飛ばしてしまった。それが驚くくらい見事に命中してしまい、師範は鼻から流血、稽古は中止となった。
「幾ら稽古中とはいえ師範の顔を蹴り飛ばすなど…」
「気にすんなっつってんだろォが。俺も熱くなり過ぎた。」
「そうか、俺との稽古がそれ程楽しかったのか…」
この人は本当に。このド天然の言葉足らず柱!師範とは完全に水と油の関係だ。強いて言うなら私との相性もそれほど良くない。
「俺のことは気にすんなァ。血ィ流すのも処置も、痛みも慣れてる。後は自分でやっからそいつと買い物でも行ってこい。」
それがいつもの師範とは少し様子が違うような感じがして、今は構うなと言われているような気がして、いつものようにしつこく付き纏うことが躊躇われた。
「それでは、夕飯の買い出しを…」
はああ…と大きなため息が口から漏れる。
「大きなため息だな。」
「ああ、水柱様、居たんでしたね。」
心外!といった様子で私のことを見る水柱様を無視してトボトボと町中を歩く。師範、怒ってるのかな。怒ってるよね…私ってば思いっきり蹴り飛ばしたもん。幾ら状況が状況とはいえあれはまずかった。
「不死川のことか?」
「あはは、よくお分かりで。」
なんでこういう時だけ察しがいいんだよ。
「不死川は怒っていないと思う。」
「はい?何の根拠もなしによくそんなことが…」
ピタッと水柱様の足が止まる。つられて私の足も歩みを止めた。
「不死川は稽古中俺ばかりを狙っていたし、犬飼からの手当てを受けている時も俺のことばかり睨んでいた。」
それはあまり根拠とは言えないけど。
「それに、犬飼から手当てを受けている時、不死川の顔はどこか穏やかだった。だから怒っていないと思う。」
私はポカンと口を開けて水柱様を見る。何、この人。滅茶苦茶喋るじゃん。
「貴方、いい人ですね。夕飯は何がいいですか?」
「…鮭大根。」
ムフフという笑い方はやめた方がいいですよ。
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瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます!>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ブフッ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ!誰でもミスはありますよ!これからも頑張ってください! (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます!お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2020年1月11日 14時