4 ページ4
「前回よりも随分基準値に近づきました。これからも食生活には気をつけて下さいね。」
一度引っかかった身体検査の再検査は無事、事なきを得た。
「良かったですね、師範！早速おはぎでも買いに行きますか？」
「あぁ、そうだなァ…」
俺の隣をひょこひょこと歩いて回るのは俺の弟子。
犬飼A。
それがこいつの名前だ。
まあこいつは変わった餓鬼で、弟子を取らないと何度も言っている俺のもとに毎日訪れては、弟子にしてくれと頼み込んだ頑固な奴。気付けば俺の生活に踏み込んでいて、頼んでもいない俺の身の回りの世話をせっせとこなしている。
「あわあわ、ちょっと師範！そんなに沢山買うつもりですか！？そんなに焦らなくてもおはぎは逃げませんよ？」
師範と俺のことを敬う様子を見せながら、どさくさに紛れて俺のことを馬鹿にするのもこいつの特徴の一つだ。
ただこの特徴が厄介で。
「俺がおはぎは逃げると思ってるとでも思ってやがんのかァ？」
「ええ。師範って偶に頭弱いじゃないですか。」
「おーおー、言ってくれるじゃねェか、嬢ちゃんよォ。」
ビキっとこめかみに青筋が立つのを感じながら凄んでみせても、こいつは一切動じない。
「これだから短気な人は。あとその歳下の女性に向かって嬢ちゃんとか言うの、オジさん臭いのでやめた方がいいですよ。」
むしろひとつ上手だったりもする。
「買い物が済んだなら屋敷に戻りましょう。折角の非番の日が終わっちゃいます！」
殆どの隊員、市井の奴らでもそうだ。俺の風貌を見て、顔を見て、特に女子どもなんてのは泣いて逃げることが多いっていうのに、こいつだけは物怖じせずに俺の弟子であることを望んでいる。
鬱陶しくて、他所を当たれと言っても言うことを聞かず、俺でないと駄目だと言い張る始末。何を考えているのか理解出来ねェ。
「師範！今の話聞いてました？！」
「あー、聞いてねェ。」
「だと思った。」
じーっと俺を見つめるAの透き通る柚葉色の瞳と視線がぶつかる。
「今日の師範はなんか変です。何かをずっと考えているような…」
ビクッと体が跳ねる。
「ハッ！もしかして…恋煩い？」
「ンなわけあるかァ！」
「痛い！」
素っ飛んだ発想をしている弟子の頭を小突き、そのままわしゃわしゃと頭を撫で回す。
「？！し、師範？！どうしたんでしょう？！」
「ンー…なんとなくだァ。」
言い訳を考えるのが面倒臭かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 751人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (
レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます！>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ﾌﾞﾌｯ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ！誰でもミスはありますよ！これからも頑張ってください！ (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます！お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2020年1月11日 14時
