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崩れ落ちるAに合わせるように一緒に座り込む。Aの頭と背中に手を回し、終始頭と背中をポンポンと叩いてやれば、Aの嗚咽は次第に収まり始め、暫くするとスースーという寝息のようなものが聞こえ始めた。
そろっとAの様子を見てみると、Aは俺の腕の中でそのまま眠りこけている。
いやいや、どういう状況で寝てやがんだァ?!
と衝撃が走るも、そもそも任務終わり、それも柱が同伴の任務で直後から今までの出来事があったことを踏まえれば、疲れて眠ってしまうのも仕方ねェか。
眠るAを抱き抱えてAの部屋に入ると、既に用意されてある布団の上にAをゆっくり下ろす。
勝手に部屋に入るのは気が引けるが、この状況じゃ仕方ねェだろ。何か文句でも言ってきやがったら、その時は問答無用でぶっ飛ばしてやる。
スヤスヤと子どものように体を丸めて眠るAを見て、今まで感じたことのない感情が俺を襲う。
Aは俺が護る。
明確に、こんな気持ちになったのは初めてだ。
鬼にさえ出会わなければ、幸せを壊されなければ、Aはこうして常に死と隣り合わせになることもなく普通の生活をして、一人の女として平和な生涯を送ることが出来た。
初めてAと会った日のことを思い出す。
俺は崩壊した建物をボーッと見つめる餓鬼に「家族はどうしたァ?」と問うと、「みんな死んじゃった。」と餓鬼は答えた。「家族はそこかァ?」と崩壊した建物の下を指せば、「いないよ。みんな消えちゃった。」と餓鬼は答えた。両親と弟が鬼になり、兄は鬼になった母親に食われ、自分だけが生き残ったと、その餓鬼は言った。
その淀んだ柚葉色の瞳に何を見たのか。自分の経験と重なったのか、情か。俺は隠が来るまでの間、その餓鬼の傍にいた。餓鬼は家族が死んだというのに、一切涙を見せなかった。
「貴方は鬼狩り様?」
「ああそうだ。鬼や俺らのことを知ってんのかァ?」
「鬼は悪者。だから、鬼狩り様が鬼を殺してくれる。」
「よく知ってんじゃねェか。お前、名前はなんて言うんだァ?」
「犬飼A。」
「そうか、A。いい名前じゃねェか。」
目の前で眠る女を見て、数年抱えてきた思いが口から零れ落ちる。
「なんで鬼殺隊なんざに入りやがったァ、A。」
眠るAの頭を撫で、サラリとした髪に触れる。
家族を失ったお前は、鬼とは関係の無いところで、普通の暮らしをしていればよかったのに。
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瑠璃瑚(プロフ) - 釈迦様さん» お恥ずかしい変換ミスです…作中一通り見直して訂正はしたのですが、まだ直っていない箇所が有ればご指摘頂きたいです。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» なんとお優しい、、ありがとうございます!>< (2020年2月19日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦様 - 師範が市販…°。:(°ε°)ブフッ! (2020年2月17日 0時) (レス) id: bccea59c19 (このIDを非表示/違反報告)
しらとぅ(プロフ) - 瑠璃瑚さん» いえいえ!誰でもミスはありますよ!これからも頑張ってください! (2020年2月8日 20時) (レス) id: 785ac6cfee (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃瑚(プロフ) - しらとぅさん» ご指摘ありがとうございます!お恥ずかしい変換ミスをしてしまいました、、>< (2020年2月8日 20時) (レス) id: f99ae6b9f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃瑚 | 作成日時:2020年1月11日 14時