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Ep.5_きっかけ ページ5

二人で暮らし始めて数ヶ月経った頃、荼毘は何を思ったか"個性"の訓練を始めた。


きっかけであろう出来事は、Aにも見当がついた。



その日は肌寒かった。そのせいで早く目が覚めたAは、いつものようにスケッチブックを背に自転車で海に出かけた。




彼らの家は海の近くだった。誰もいない海辺を走るのは心地良かったが、風は乾燥していた。


ちょうど、燈矢が瀬古杜岳で焼け死んだ日のようだった。

勿論Aが燈矢の事情を知る由もないのだが。








Aが自転車を止めたのは、昼になっても人通りの多くならない、所謂"地元民の穴場"だった。


もはや定位置と化している岩場に腰掛け、"個性"を使って周囲の空気中にある振動を"歪ませた"。

絵に集中したかった。






Aの"個性"は「歪曲」である。




空気中のあらゆる物を歪ませるのだ。


幼少期の苦労に免じてか、今となってはとても使える。



彼の存在が世に知られれば、ヒーロー側も敵側も当然欲しがるだろう。




調整が難しいが、宙に浮かんだり、それこそ人を殺すことだってできなくはないのだ。




この強力な"個性"を持った少年を、特にヒーロー達は放ったらかしにしてはならなかったのだが、やっぱり神様はいたずら好きだった。





時間の流れを忘れていたAが現実世界に引き戻されたのは、水平線に見える太陽が今にも沈もうとしている時刻だった。









荼毘大丈夫かな、まあ大丈夫でしょ。



と、一応心配しながら自転車を漕ぐ。家に着く頃には、辺りは暗くなっていた。





「ただいま、」と小さく呟く。




荼毘と暮らし始めるまで縁のない言葉だった。いい響きだ。




しかし、リビングから何かが落ちる音と荒い息が聞こえてきて、Aは流石に焦った。






「荼毘…?」






そこを覗けば、大とはいかなくとも惨事が。






つけっぱなしのテレビのせいで、電気が落とされているにも関わらず部屋は明るい。


鎮火しかけているが、所々に残る荼毘の"個性"によるものであろう火も原因かもしれない。


そこでは、こちら側の事情も知らないニュースキャスターがエンデヴァーがどうこうと心底どうでもいい報道を垂れ流していた。



それを見て、なんだかんだ頭の切れるAはなんとなく荼毘の事情を察した。

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篠瀬(プロフ) - 金爽さん» こちらこそ、読んでいただき、コメントもくださりありがとうございます😆そう言っていただけると本当に嬉しいです!! (4月1日 8時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
金爽(プロフ) - あ、、さ、さいこう。ありがとう、ござい、ます。 (4月1日 0時) (レス) @page35 id: 39dbcee998 (このIDを非表示/違反報告)
篠瀬(プロフ) - ありがとうございます!とっても励みになります!!もっと面白い話をお届けできるよう、これからも頑張ります!! (3月27日 10時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
本好き - 面白かったです(^o^) 更新頑張って下さい! (3月27日 9時) (レス) @page25 id: 6183cd2648 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:篠瀬 | 作成日時:2024年3月11日 11時

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