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Ep.3_彼隅家 ページ3

"個性"のコントロールがままならないために周囲の空間を無意識下で常時歪ませていたらしく、感覚器官からの情報がほぼ遮断されていた。


それが両親にさえ盲聾者だと思われるほど極端だった上、数年経っても人や物の大きさがあべこべに見えたり、小さい音は拾えるのに大きな声で呼ばれても気づかない、なんてことが続いた。





病院で診せても異常はなかったのに。



実際のところは、前述の通り"個性"の暴走だったのだが、元々真面目で気の弱い親はそんな息子を段々と気味悪がるようになり、中学に上がる前に限界が来た。





厄介払いするように"園"に入れられ、そのまま何年も音沙汰無し。




去年の暮れに伯父から手紙が送られてきたが、内容は息子への愛情の代わりに金だけはあった両親が夜逃げするように家を出た、ということだった。



元いた家はライフライン含め残しているとのことで、要は"園"を出るなら親元へは来ないで、そこで一人で暮らせということだろう。


金も毎月口座に振り込まれているらしいし、手回しのよろしいことで。







そんな闇の深い事情を持つ痩身の少年__もといAは、しかし燈矢に多くを語ることはなかった。



それはひとえに、彼の「面倒くさがり」という性格故である。



ある時ぽろっと話すかもしれないが、彼は基本その時その場の気分で生きているため、燈矢、その時その場になるまでの辛抱だ。



両親が蒸発したと聞いた時でさえ、金はあるのかラッキーくらいしか考えなかったのだ彼は。




「心配事は明日の天気まで」



Aの座右の銘である。



面倒くさがりも極めれば、何周か回って「楽観主義」に進化したり退化したりするもので、彼も然り、楽◯カードマンも目を見張るような紛うことなき楽天家である。とても生きやすい。




だからこそ、そんな面倒くさがりな性格が分かってきた頃の燈矢にとって、何ゆえに自ら「面倒」を自宅に引き入れたかは甚だ疑問だった。




多分そういう気分だったんだろうな、と付き合いの長くなってきた頃の燈矢は解釈した。




というよりは理解を諦めた。



目の前で困っている人を見捨てられない、なんてヒーローじみた本性がふと顔を出したのだ、とは考えないようにした。

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篠瀬(プロフ) - 金爽さん» こちらこそ、読んでいただき、コメントもくださりありがとうございます😆そう言っていただけると本当に嬉しいです!! (4月1日 8時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
金爽(プロフ) - あ、、さ、さいこう。ありがとう、ござい、ます。 (4月1日 0時) (レス) @page35 id: 39dbcee998 (このIDを非表示/違反報告)
篠瀬(プロフ) - ありがとうございます!とっても励みになります!!もっと面白い話をお届けできるよう、これからも頑張ります!! (3月27日 10時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
本好き - 面白かったです(^o^) 更新頑張って下さい! (3月27日 9時) (レス) @page25 id: 6183cd2648 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:篠瀬 | 作成日時:2024年3月11日 11時

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