Ep.2_脱走 ページ2
扉の先にはひまわりの面を被った不気味な男がいて、事情を把握した燈矢は彼と揉み合いになった。
燈矢は混乱し、癇癪を起こして火を放った。
そしてそのまま"園"を逃げ出した。
何も持たずに。
発火時には小火程度だったのが、今では園全体に広がっており周囲は異様に明るい。
それでも"個性"が弱体化したことは文字通り火を見るより明らかで、死人の出るような火事ではない。
燈矢はその場から逃げるように、裸足のままで駆け出した。
行く宛はあったのだが、ここがどこかも分からない。
金もないのに、どうやって辿り着けるだろうか。
三年間の昏睡で体力の落ちた体はすぐに言うことを聞かなくなり、荒い息が収まらないまま燈矢は脚を止めた。
そんな中、彼に差し出された手に顔を上げると、人生とは不思議なもので、つい数十分前の少年が立っているではないか。
不思議も不思議、ねじれちゃんなら頭がパンクしてしまうかもしれない。
なんでいんの。
「君…なんでここにいるの」
こっちのセリフなんだけど。
「……………うち、来る?」
なんで。
・
その場からほんの近くに彼の家はあった。
親いないから、と言って彼は鍵のかかっていない玄関扉を開けた。
訳も分からず迎え入れられた燈矢の頭の中に、次々と湧き出る疑問。
家あるならなんであんな所いたの。
なんで親いないの。
なんであんな所にいて、素性も知らない俺を拾ったの。
具合悪そうだけど大丈夫?
「イカレてる」って、どういう意味?
燈矢はそれらに対して、満足できる解答を得られた訳ではなかった。
リビングのソファに猫のように寝転がった少年は相変わらずほぼ単語で答えた。
「タダ飯食えるから」
「蒸発」
「抜け出してた」
「だいじょぶ」
「アリス症候群的な」
色々闇が深い。
そういえば、表札にあった「彼隅」はなんと読むのだろうか。
・
因みに燈矢が察した通り、
彼隅家の長男には、中々"個性"が発現しなかった。
正確にはそう思われていただけだったのだが、四角四面な両親はそんな息子に毎日神経をすり減らしていた。
それが息子を案じてか世間体を気にしてかは分からない。
加えて、彼には盲聾の気があった。
・
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篠瀬(プロフ) - 金爽さん» こちらこそ、読んでいただき、コメントもくださりありがとうございます😆そう言っていただけると本当に嬉しいです!! (4月1日 8時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
金爽(プロフ) - あ、、さ、さいこう。ありがとう、ござい、ます。 (4月1日 0時) (レス) @page35 id: 39dbcee998 (このIDを非表示/違反報告)
篠瀬(プロフ) - ありがとうございます!とっても励みになります!!もっと面白い話をお届けできるよう、これからも頑張ります!! (3月27日 10時) (レス) id: e526e5a105 (このIDを非表示/違反報告)
本好き - 面白かったです(^o^) 更新頑張って下さい! (3月27日 9時) (レス) @page25 id: 6183cd2648 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:篠瀬 | 作成日時:2024年3月11日 11時