第202話「収束。壱」夢主 ページ20
ラブを探偵社に預けた後、すぐに行った例の死亡した被害者の入院していた病院への聞き取り調査は無事に終わった……のだが。
「うーん、困ッたね……。“特に何も可笑しい点は無かッた”とは……。」
無駄足だッたかなぁ、としょんぼりとしながら云う谷崎さんに、私は首を振って否定した。
「いえ、寧ろ収穫かと。」
「……え?」
私が谷崎さんの言葉を否定すると、谷崎さんは不意を突かれたような不思議そうな表情を浮かべる。
「何も可笑しい点は無かった……詰まり、状態が悪化する前兆さえ無かったのです。そんな状況での急死となれば__」
「そッか、十中八九異能の影響……!!」
「えぇ、恐らくは。……ね、こう考えるとかなりの収穫でしょう?」
私が微笑んでみせると、谷崎さんも嬉しそうに笑い返してくれる。
……と、その時の事。
私の携帯電話が軽やかなメロディを奏でる。
このメロディはポートマフィアとの連絡用のものだ。
「……あれ、いろはちゃん電話?」
「……中也さんから、という事は何か判ったのかも。谷崎さん、失礼します。」
私がそういうと、谷崎さんは気にしないで、と言ってくれる。
谷崎さんの優しさに感謝しながら私は通話に応じた。
「……はい、暁です。」
『おぅ、いろは。俺だ。察しは付いてるかもしンねェが……調査が終わッたからな。資料を持たせた樋口を探偵社に向かわせておいた。』
案の定中也さんの声が聞こえてくる……が、名乗らなければオレオレ詐欺感が途轍もない話し方だな、なんて思ってしまう。
「有難うございます、中也さん。では、また。」
『嗚呼、今度は仕事なんて関係なく顔出しに来い。待ッてるぜ。』
「はい、是非!!」
ツー……ツー……という通話が切れた音がして、私は携帯を耳から離して谷崎さんの方を振り返った。
「探偵社に書類を届けて下さるそうです……直ぐに帰りましょう、谷崎さん。」
「うン、判ッた。そういうことなら入れ違いにならないように急がなきゃね。」
谷崎さんの優しい微笑みに、私は「はい!!」ととびっきりの笑顔で頷いたのであった。
第203話「収束。弐」夢主→←番外編「降誕祭の贈り物(後編)」中島敦
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時