第188話「眠り姫・参」夢主 ページ46
太宰さんは、目を見開いていた。
何時も太宰さんが願いを口にして、私が叶えていたからだろう。
今まで、一度たりとも太宰さんに「お願い」などしてこなかったから故だろう。
私はもう一度、確りと云う。
「太宰さん。夢野久作を、殺さないで。」
「……嗚呼。嗚呼、勿論さ。勿論だとも!この世に生きる全ての人々はいろはのお願いは全て叶えるべきなのだ。私も、其れに倣うことにしよう!」
太宰さんは一気にそう云うと、ご機嫌そうに鼻歌を歌いながら(因みに、矢っ張り例によって音痴である)木の根を削って行く。
「ふん…、甘ぇ奴だ。そう云う偽善臭い所も反吐が出るぜ。…どうせ、いろはに乞われなくたってお前は殺してねぇんだろ。」
「まぁね。…Qが生きてマフィアに居る限り、万一の安全装置である私の異能も必要だろう?マフィアは私を殺せなくなる。合理的判断だよ。…最も、今こうしているのはいろはが居たからだけれど。」
「ふん…。どうだか。」
太宰さんは、私を見ると少し柔らかく微笑んで下さる。
私は「太宰さんが私の為に微笑んで下さった」という事実が嬉しくて、思わず微笑み返した。
「それに…マフィアが彼を殺すのは勝手だけどね。大損害を受けたマフィアと違って、探偵社は国木田君が恥ずかしい台詞を連呼しただけで済んだから。」
「社員に詛いが発動したのか。その後如何した?」
驚いた様にそう云う中也さんに、私は目を逸らし、太宰さんはお茶目な(?)顔になられる。
「勿論録画したけど?」
…因みに、その録画デヱタは私が消去しておいた、ということは太宰さんには秘密である。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時