第102話「鬼ごっこの始まり」アグラソル ページ9
「__…準備は、よろしくて?」
「…あぁ。」
谷崎さんがそう答え、鍵を手にした瞬間…二人の背後からアンが現れ……
「ひとりめ、捕まえた☆」
…次の瞬間、谷崎さんは既にアンに捕えられた後だった。
「わぁあああぁぁああああ!!!」
「谷崎さんッ!!」
僕は悲鳴を上げる谷崎さんの名を思わず呼んだ。
「またお友達が増えちゃったわ!嬉しいわね、アン!」
そう云ったモンゴメリの背後でアンはケタケタと嗤う。
それからモンゴメリの肩をツンツン、とつついた。
「なぁに?まだ欲しいの?」
モンゴメリはそんなアンに気が付くと不気味な笑顔を浮かべる。
「それじゃあ………」
モンゴメリは敦さんをギッと睨む…と同時に、アンは敦さんめがけて走り(?)出した。
…速い。
下手すると芥川さん__否、もうさん付けでなくともいいのだったか__の異能たる羅生門並みの攻撃速度だ。
…だが、それ以上に。
初めてこの目で見た敦さんの異能__“月下獣”は、いろはから話を聞いていた以上の素早さだった。
…否、それだけでは無いのだろう。
まだまだ粗削りでは有るがアンの攻撃をすべて避けていく敦さんの異能の使い方__つまり戦術や戦闘術等だが__が優れている…否、正しくは光るものを持っている。
それも大きく貢献している気がしてならない。
…成程、いろはが気に入るわけだ。
そんな風に考えていた僕とは対照的に、モンゴメリは嬉しそうに笑っていた。
…表面上は。
いろは程人の感情…特に憎悪や妬みなんかの負の感情に敏感ではない僕にでも分かるほどに、モンゴメリは敦さんに対して…そして、
憎悪、妬み、憎しみ、渇望、嫌悪、嫉妬、敵意、劣等感、その他諸々。
そんな感情を全て混ぜて、煮詰めて濃縮した様な、名前のない感情。
それは、僕もよく知っていた。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年7月10日 12時