第107話「危機」夢主 ページ14
「じゃあそれで決まりで……。…暁?おい、聞いて…__」
「……拙い。すみません、私出ます!鏡花ちゃん借りて行きますね!」
「はっ……おい、暁!?」
緊急会議をしていた私達だったが、私はソルからのある信号を受けて部屋から飛び出す。
「鏡花ちゃん!」
「…何、いろは姉さま…急いでる?」
「物凄くね!」
「…分かった」
その一言と、私の表情で大方悟ったらしい鏡花ちゃんは椅子から立ち上がる。
「行くよ!」
それだけ言うと、追いかけて部屋から出て来た国木田さんの制止の声も聞かず、探偵社を飛び出した。
“ある信号”。
それは……ソルが、異能を発動したという信号。知らせ。
私が知る限り、ソルと最も相性が良い異能は私がマフィア時代捕らえた小さめの敵対組織の長の異能。
その効果は、“異能の発動を知らせる異能”。
ソルにマフィア時代に言っていたことを未だに守ってくれているのだとしたら……確実に会敵した事になる。
しかも相手はモンゴメリ。
あの速さでは敦くんでさえかなりキツイだろう。
つまり状況は最悪……!
確か、谷崎さんはこのルートで探すと云って居た筈。
時間的に考えて、この辺りに居る筈である。
もし居なければ…最悪、モンゴメリとの取引を破って社に報告して鏡花ちゃんと…否、夜叉と女王の二人で一気に畳みかける事も視野に入れなければならない。
…そう、考えていた時だった。
とん…と、前から走って来た少女と肩が当たる。
「あっ、すみません、よそ見してて…__え?」
慌てて謝る私を見ていたのは、涙目のモンゴメリだった。
その眼には、絶望と恐怖が宿っていた。
「あああっ、エリスちゃん!」
聞き覚えのある声に驚いて思わず其方を見ると、その隙にモンゴメリは去ってしまう。
私は人ごみに消えていくその後ろ姿を少し迷いながら視界から追い出し、目当ての人物を探し出す。
「居た!無事で良かった……」
「…鏡花ちゃん!いろはちゃんも…!」
少し涙目になりながら、敦くんとソルに微笑みかける私と、「心配した」と云い敦くんに抱きつく鏡花ちゃんに、敦くんは笑って「二人共、ありがとう」と云ってくれる。
ソルも、異能を解き少し離れた場所から嬉しそうに微笑みながら此方に歩いてくる。
…何も、無かった。
少なくとも私にとっては、無事に済んだ。
そう…思った時だった。
「それでは、私達は失礼するよ」
そう優しく微笑んでいるその白衣の男性に、私は目を見開いた。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年7月10日 12時