第57話「可愛らしいお客様」夢主 ページ8
マフィアのとある一室で、絶賛行方不明中である私は暇を持て余していた。
……というのも、部屋の外には見張りが居たのである。
「……もう、これじゃあ拠点内を出歩くことさえ自由に出来ないし、御伽噺のお姫様と変わんない……。」
私はベットに腰掛けながら、ブツブツと文句を云う。
……早く太宰さんの元に行きたいのに。
そんなことを思いつつ、何となく、クローゼットを開けてみる。
……と、そこには数着の衣服とネグリジェが仕舞われていた。
家具も本棚の中の本も私の好みだったのに、衣類だけは中也さんの好みである。
……とはいえ、私の服の好みは太宰さんの好みなので判らなくはないが。
「……見張り、付いてくるかなぁ。」
私が溜息を吐きながらベットに腰掛けた、その時……扉の向こうが少しざわついていて、好奇心に負けた私が扉を開けると……そこには、可愛らしいドレスに身を包んだ、巻き髪の金髪の可愛らしい少女が見張り達と言い争っていたのだった。
その少女は私に気が付くととびっきりの笑顔をみせる。
その少女の腕の中には……見覚えのある黒猫が楽し気にこちらを見つめていた。
「ほら、居るんじゃない!久しぶりね、いろは!私、貴女が居るって聞いて遊びに来てあげたのよ。なのにこの男たち、ここには居ないって云っていたの。リンタローに云って、クビにしてもらおうかしら。」
「エリス嬢にラブ……!お久しぶりです、エリス嬢。まぁまぁ……彼らも仕事なんですよ。どうか多めにみてあげて下さい。」
真っ青になる見張り達を庇う為に、笑ってそう云うと、エリス嬢は「いろはのお気に入りなら仕方ないわね……。」と、渋々といった様子で何とか許して下さる。
「では改めまして……いらっしゃいませ、エリス嬢。」
「入るわね、いろは。。私、いっぱい歩いて疲れちゃった。」
「みゃー。」
こうして、私の部屋に可愛らしいお客様が訪れたのだった。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時