第79話「ソルと探偵社員・壱」夢主 ページ32
__社長の表情は……今まで見たことも無い程に、満足げだった。
「……作戦は成功したみたいだね、ソル。」
私は別れた時より髪がボサボサになっているソルに、笑いかける。
「嗚呼、見事にね。」
「いろはの策だと判っていながら、欲に抗えなんだ。」
「……ほんと好きですよねぇ。まぁ分かりますけど。」
私が苦笑いしながら、まだよしよししたいらしい社長に答える。
「……何の話です?」
「“猫”だよ。異能を見せるのを兼ねて、ね。」
「嗚呼。えぇと、人虎……否、失礼。中島さんだったかな。そちらは宮沢さんだよね。初めまして、アグラソルだ。気軽にソルと呼んでくれ。」
ニッコリと親し気に微笑み、手を差し出すソルに、“人虎”と呼ばれた敦くんは渋々といった様子で握手に応じる。
……一方、賢治君は目を輝かせていたので、一応理由を聞いてみる。
「……どうしたの、賢治君?」
「猫になれるんですか、ソルさん!やっぱ都会って凄いです!」
「う、うん……。都会関係ないし異能だけどね……。」
「話をまとめると……猫になる異能なのか?」
国木田さんの問いかけに、ソルは微笑みながら否定する。
「否。僕の異能は“よく知るもの”に姿形を変えれるんだ……厳密に云うなら外見の情報、人物の場合は声色、異能を持っているなら異能の詳細も知っている必要があるけどね。つまり、成れるのは猫だけじゃないってことさ。」
自慢気にそう云うソルに、其れを聞いた賢治くんは更に瞳をきらきらと輝かせてソルを見詰めている。
「おぉ!じゃあ……牛にもなれるってことですか?」
「……牛かい?そうだね……、本物を見たことが無いから何とも言えないけど……一ヶ月程時間を貰えれば、出来ないことも無いと思うよ。」
「そうなんですか……。」
ソルに遠まわしに「今すぐには無理だ」と伝えられた賢治くんは、少し悲しそうな表情を浮かべた。
「さて、そういう訳で……ソルはいろはに付くように。」
「はい。」
こんなわけで、ソルの入社試験は無事合格で終わったのだった。
……まぁ、狡い手を使った感は否めないし……最も、此処からが本番なのだが。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時