距離 ページ5
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放心状態の私の手を引っ張るドンヒョクの後ろ姿はなんだか大きい。自転車が置いてあるところまで手を繋いで坂をくだる。その間ドンヒョクは、あの女はただのクラスメイトだ、多分次の日の提出物とかを聞かれただけ。記憶に残らないくらい普通の会話だ。とか、かっこつけて見えるとか俺ちょーダサいじゃん、とかぶつぶつ言っていた。
暑かったせいだ、
日が暮れ始め下へおりても丘の上と変わらないくらい涼しくなっていたのに、心が、暑かったせいにしたがる。だけどそんなごまかしも効かないくらい頭もちょっとだけ冴えてきた。
だってだってドンヒョクがそんなことするはずない。雰囲気でしちゃったみたいになってる。どっちも気持ち言ってないしなんか、
なんか、
こんな宙ぶらりんな気持ちのまま帰るなんてできない。そう思ったら繋いでくれてる手をぶんっと払っていた。歩く気も失せ、立ち止まる。
「なんで?」
「なんでって。なにが〜」
めんどくさそうに振り返るドンヒョクを見ていたらだんだんむかむかしてきて睨みつけた。
「いやおまえさ、なんで俺が最近こんな感じかってなんでそれが自分のせいかなとかは思わないわけ?」
「え、」
「だからさ、」
ガツガツガツ――。
はぁとため息をつきながら首を傾げたドンヒョクがこちらへ向かってくるからズズズと思わず後退り。目の前まできて怖い顔で睨みつけたくせにうわああと自分の髪をぐしゃぐしゃにした。それからもう一度私を見つめる表情は、さっきとは打って変わって泣きそうで。困ったような、優しい、何か大事なものを見るような、そんな顔でもう一度はぁ〜と柔らかいため息をつき直した。
やっぱり、暑かったせいだと思う。
何もかも言ってしまおうと思ってしまったのは。
「私、ずっと、ずっとドンヒョクが好きだけど」
「お、ぅ、」
「もしかしてドンヒョクもずっと……」
「おまえが好き」
暑さで朦朧とした自分の行動とママたちが追い出してくれたことにこんなに感謝した日はない。
帰り道、並ぶ自転車の距離は行きよりも近い。そんなにくっついて走ったら危ないでしょってくらい。
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かいにに(ぺったん)(プロフ) - あおさん» コメントありがとうございます!以前読んでいただいたことがあるみたいで嬉しいです(*´ω`*) ご丁寧に個別メッセージまでありがとうございます! (2023年3月22日 10時) (レス) id: ca38fe022c (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - またこのお話に出会えて嬉しいです (2023年3月22日 1時) (レス) id: 94c23216ad (このIDを非表示/違反報告)
かいにに(ぺったん)(プロフ) - みんははさん» わぁ!おんに〜!更新通知オフにしたつもりなんですけどもしかして通知いっちゃいました?恥ずかしいですがまた読んでもらえて嬉しいです!いつもありがとうございまーす\(^o^)/ (2022年6月29日 15時) (レス) id: ca38fe022c (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - ぺっちゃんありがと! (2022年6月29日 13時) (レス) @page7 id: bf5897c69c (このIDを非表示/違反報告)
かいにに(ぺったん)(プロフ) - ちゃんそるさん» 初めまして、お読みくださりコメントもありがとうございます。1話だけなのに喜んでくださる方がいらしてよかったです(:_;)ご案内ですが、あとがきに記載通りコメントでは致しかねますのでお手数ですがボードのメッセージへお越しください。よろしくお願いいたします (2022年6月28日 16時) (レス) @page7 id: ca38fe022c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺったん | 作成日時:2017年7月30日 0時