枯れた白薔薇 ページ10
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この女、何者なんだろうな。
話ぶりからすれば、とんでもない若作りの四十代、でなきゃ人間でないかのどちらかだろう。
まぁ、死神なんてものがいる世の中だ。ジネヴラが天使だろうが悪魔だろうが神だろうが、そう驚いてもいられない。
思うことは兎に角多いが、彼女の昔話を聞いているうちに屋敷に着いた。
「いい庭だな」
「それは恐れ入ります。うちの庭師も喜びますよ」
思わず呟いた一言は、耳のいい執事に拾われていた。
秋だけれど一面に咲き誇る淡い色の薔薇。恐らく、グルスアン・アーヘン。
相変わらず、手入れの良いもんだな
差し出された彼の手を取って、狭い馬車から抜け出す。懐かしい、サーモンピンクの薔薇が纏う、甘い紅茶の香り
「……」
「A様、どうかなさいましたか?」
「あ、あぁ……いや、何でもない、です」
「ごめんなさい、話しすぎたわよね。疲れさせちゃった?」
「いや、面白かったよ。よかったら、また聞かせてくれ」
「えぇ、何でも聞いてちょうだいね!」
にこやかなジネヴラの笑顔のその奥に、処理しきれない過去があるんだろう。
こいつも、軽そうに見えて色々引きずってんだろうな。
「それではご案内いたしますね。ジネヴラ様、今年のファントムハイヴ邸の白薔薇は見事でしたよ」
「まぁ本当?よかった、それに雨も適度な様だったし」
「えぇ、ですからドライフラワーも良い出来……と、言っていただけるものかと」
「毎年、どうもありがとうね」
「いえいえ、おもてなしは執事として当然です。」
薔薇の、ドライフラワー……?ジネヴラが仕事に使うもの何だろうか。そんなに香りが強いとも思えんのだが……
「仕事道具か?」
「いいえ……うーんと、ね。いつも此方に来たらシエル君のご両親のお墓に行くの。墓前はどうしても、あの花がよくて」
「成る程」
眉を寄せて笑うから、言葉以上に悲しげだ。
成る程とは言ったものの、墓前にドライフラワーって珍しいな。
どうであれ、女の泣き顔は結構だ。これ以上聞く必要もないだろう。
先程まで、ジネヴラがとろけるような笑顔で話してた過去の人物達。数年前の事件で殺された……我が家とも、切って切れない縁のある貴族だ。
その死を悔やんで、喪服に身を包んでいるんだろうか。テイカーにしろ、こいつにしろ。
「執事さん、申し訳ないのだけれどお荷物お任せしていいかしら?先にお墓にご挨拶してくるわ」
「かしこまりました。今花束をお持ちしますね」
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足立甚(プロフ) - うっ...最高すぎた (5月25日 9時) (レス) @page25 id: a5c9d3b18a (このIDを非表示/違反報告)
ミィ - やったあぁぁぁ!!続編だ!!この作品大好きなので嬉しすぎます♡ (2021年10月3日 1時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)
坂田銀糖(プロフ) - うわぁぁ、この小説を書いて下さいまして、ありがとうございます。応援してます。続きも気になりました! (2021年9月19日 8時) (レス) id: 4e79a91855 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Loot | 作成日時:2021年1月14日 22時