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出発 ページ5

気をつけて行くんだよと、テイカーからゆったり頭を撫でられて、何となく嬉しくなったのは束の間。
はしゃぐガキみたいにジネヴラが私の手をとって、小走りに店から出た。

「さ!早く行きましょう!執事さんがお待ちだわ」

「ちょっ、おい、引っ張るなって……」

「ヒヒッ……いってらっしゃぁ〜い」

ジネヴラが手を振る方には、いつぞやの真っ黒な執事がいた。相変わらず胡散臭い微笑みのまま、彼女のトランクを受け取る。

「お久しぶりです、ジネヴラ様……と、A様もご一緒でございますか?」

「えぇ、テスターの女の子の補充よ」

「それはようございました。今年はマダムレッドともいらっしゃいませんしね」

そういや此間死んだな、あの人。真っ赤な血化粧の、斬り裂きジャックの真犯人だ。
執事の言う感じだと、毎年テスターとしてあの女も参加していたんだろうか。

「えっと。ご無沙汰してます、執事さん」

「えぇ、お久しぶりです。私のことはどうぞセバスチャンとお呼びくださいませ」

セバスチャンて言うのか、此奴……。全く存じ上げなかった。恭しく一礼した彼に私も荷物を渡して、馬車に乗り込む。
ジネヴラもセバスチャンも乗り込み、彼の合図でまた馬車は走り出した。

執事もこっちに乗るのか。

「いつもは執事さんに話し相手になってもらっているのよ。一人だと退屈だから」

素朴な疑問は、口から出てたんだろうか。
まるで考えを読むみたいに答えたジネヴラは、悪戯っぽく笑っている。やっぱ可愛いな。

「そのお洋服、素敵ね!」

「あぁ、ありがとう。少し前に仕立てたんだ。……お屋敷に粗末な服じゃいけねぇしな」

「よくお似合いだわ」

彼女が褒めてくれたのは、先日私がホプキンス・テーラーで作って貰った揃いのスーツだ。
柔らかな生地のブラウスも、細身のパンツも我ながら似合っている。ベストの作りもカッコいいし、中々良いブランドに出会えたものだ。

「……男装?」

きょとん、なんて効果音がつきそうに首を傾げたジネヴラに、思わず笑ってしまう。

「こっちの方がいざと言うときに動きやすいだろう?結構な巻き込まれ体質なもんでね……気を使うんだよ」

相変わらず腰に据えた長剣は、いつも通りブルーダイヤを輝かせてる。そういえば、最近は面倒ごとに絡まれてないな……
まぁ、テイカーに理由がありそうだが。

はじまり、はじまり。→←あんなことって、どんな。



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足立甚(プロフ) - うっ...最高すぎた (5月25日 9時) (レス) @page25 id: a5c9d3b18a (このIDを非表示/違反報告)
ミィ - やったあぁぁぁ!!続編だ!!この作品大好きなので嬉しすぎます♡ (2021年10月3日 1時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)
坂田銀糖(プロフ) - うわぁぁ、この小説を書いて下さいまして、ありがとうございます。応援してます。続きも気になりました! (2021年9月19日 8時) (レス) id: 4e79a91855 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Loot | 作成日時:2021年1月14日 22時

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