永遠を誓う ページ22
照れ屋な小生の子犬ちゃん。大丈夫かなんて小生には聞けなくて、そのまんま気を逸らさせようとしちゃう、ちょっと不器用な娘。
「辛くなんてないさ……それよりね、小生は涙も流せなくなる日がくるのは怖いんだぁ」
「……未練がましいのな」
「否定しないし、その通りだよ……たまに、小生の宝物を見ながら、その持ち主たちを思い出すんだ」
これは、あのこ。あれは、あの時であった、彼の。そんな風に一つ一つ、何も忘れてしまわないように想起する。
悲しいよ、辛いよ。苦しくてたまらない。
でもね、
「この悲しみから抜け出せる日の方がよっぽど苦しいのさ……小生は、あの子たちを……絶対に忘れたくないから」
もし、涙を流すこともなくなるほど、彼らを忘れてしまったら。そんな悲しいことないだろう。
「……悪かった、勝手なこと言って」
「ヒヒッ、謝らないでおくれ。優しい優しい小生のA……」
もう一度、抱きしめ直す。とくん、とくんって、心臓がゆっくりと歩みを進める音。心地いい温もり。
毎日死者と触れ合う仕事だ。だからより一層、彼女の命が愛おしくなる。
「ジネヴラも、そうなのか?」
「あぁ、そうさ。まぁ小生とは多少違うとこはあるけどねぇ……」
似たような魂を探して、代わりを見つけようとするところとかね。
「Aも、アイツの待っていた花束を見ただろぉ〜う?」
「白薔薇の、ドライフラワーか」
執事クンお手製の、真っ白だった薔薇を枯らした花束。あの花束は、別にジネヴラの嫌がらせでも何でもない。そう言う意味があるのだから。
「……枯れた白薔薇の花言葉はね、永遠を誓う、というのでね」
「永遠……」
unlimited、無限に続く、ジネヴラの愛。小生もあの女も、人間とは訳が違う。そんな者が誓う永遠が、どれほど重苦しいものか。
クローディアの遺髪も、あの白薔薇と大差はない。小生だってここに永遠を誓っている。
「アイツはねぇ、現伯爵のお母さんのことが大好きだったのさ」
「美人?」
何で顔の話になるんだろうねぇ、Aは。もっと他に聞くことあるだろうに……
「そりゃ、名門伯爵家のお嫁さんだもの」
「へぇ……会いたかったな。ていうか、その旦那の方を好きなのかと思ってた」
「あぁ、伯爵のお父さんの方?んー、……ジネヴラは多分、ヴィンセントのことも愛していたよ」
けど、多分。伯爵夫人に送られる甘やかな声も視線も、まるで恋する少女のそれだった。だからあの夫婦への思いは恐らく別々のもの。
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足立甚(プロフ) - うっ...最高すぎた (5月25日 9時) (レス) @page25 id: a5c9d3b18a (このIDを非表示/違反報告)
ミィ - やったあぁぁぁ!!続編だ!!この作品大好きなので嬉しすぎます♡ (2021年10月3日 1時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)
坂田銀糖(プロフ) - うわぁぁ、この小説を書いて下さいまして、ありがとうございます。応援してます。続きも気になりました! (2021年9月19日 8時) (レス) id: 4e79a91855 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Loot | 作成日時:2021年1月14日 22時