「わん。」 ページ19
ごめんよぉって、全く申し訳なく思っていない声色でテイカーが謝る。
そのまま私の隣に倒れ込んで、ぎゅっと抱きしめられた。
「おわぁ」
「ヒヒッ……大人しくおしよ」
「ん。任せとけ」
「ふふっ……いい子だねぇ」
私はいい子だから、大人しくテイカーの腕の中で丸くなる。ついでに、よく出来たお利口さんだから、テイカーの細い首に自分の腕を回して、ぐっとくっついてやる。
「よぉしよぉ〜し、お利口さんだ」
「ンふふっ、血統書つきだぜ」
「ヒッヒッヒ……勘当されたのはどこの子犬だい?」
わん、なんて馬鹿みたいに一つ鳴いてやると、呆れたように微笑んでまた頭を撫でられる。こいつ私のこと犬だと思ってんのかな。
「今日は疲れたかい?」
「貴族の生活って気が滅入る……つーか、あのチビちゃんに敬語で話すの鬱陶しいんだが」
「ヒヒッ、ここだけにしておくんだよぉ〜?伯爵はすぅーぐご機嫌ななめになっちゃうからねぇ」
「ガキだなぁ」
別に、プライドが高いのは嫌いじゃないが。あの歳で親の跡を継いで、伯爵であり女王の番犬なんだ。気が強くもなるだろう。
「結構ね、香水のテスト楽しみなんだ」
「ヒヒッ、そぉーかい……ジネヴラは良い腕を持っているからね。期待しておいで」
「テイカーさ、私が香水つけたら嫌?」
「……嫌じゃないさ。ただ、そうだねぇ……」
言葉を濁すテイカーの顔を覗こうとするが、やっぱり重苦しい前髪でその瞳はうかがえない。
香水って、まだ微妙に良いイメージがないんだよな。
特に年寄りとか。
「別に、嫌なら嫌って言えよ」
「ヒヒッ、じゃあ、ね……ジネヴラに選ばさせないでおくれよ。小生がちゃぁ〜んとAに似合うのを選ぶから」
「ふはっ、何それ!嫉妬?」
「しちゃ悪いかい?」
「んーん、嬉しい」
素直なのが可愛いくて、思わず吹き出しちまった。正直に嫌って、そういうこと正直に言ってくれるんだ。こいつ、どんな顔してそんなこと言えるんだろ。
何となく、あの綺麗な相貌を拝みたくて腕を伸ばそうとするけど、更に強く抱きしめられて中々上手くいかない。
「はーなーせぇー」
「イッヒヒ、逃がさないからねぇ」
「逃げねぇよ」
ご存知でしょうけどよ。私があんたから逃げる事は、おふざけでもありえない。
それでも縋り付くのが、こいつなんだろうなぁ……
「顔見たい」
「また後でね」
「見せないとイタズラすっからな。覚悟しとけ」
「……今日は何されるんだい?」
「………気持ちいいこと」
377人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
足立甚(プロフ) - うっ...最高すぎた (5月25日 9時) (レス) @page25 id: a5c9d3b18a (このIDを非表示/違反報告)
ミィ - やったあぁぁぁ!!続編だ!!この作品大好きなので嬉しすぎます♡ (2021年10月3日 1時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)
坂田銀糖(プロフ) - うわぁぁ、この小説を書いて下さいまして、ありがとうございます。応援してます。続きも気になりました! (2021年9月19日 8時) (レス) id: 4e79a91855 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Loot | 作成日時:2021年1月14日 22時