検索窓
今日:15 hit、昨日:10 hit、合計:4,298 hit

はち ページ28

執事が辞した部屋で、ソファに座り込んだまま全く口をきかなくなってしまった和輝の隣に座り、翡翠は幼馴染みの艶やかな黒髪を優しく撫で始めた。


「頑張って、和。俺が一緒にいてあげるから」


「………うん」


「どこのゴフジンさんか知らないけど、どっかのオバチャンなんてパパッと片付けてさ、海に遊びに行こーよ♪」


「………うん…」


翡翠の言葉など実は全く聞こえていない和輝は、ただ相槌を打ちながら自分の考えに耽っている。



蒼麒と共にその道を歩くということは…このような事も頻繁にあるということだ。


いつでもどこでも蒼麒と一緒にいるという訳にもいかないのだし、時には彼の名代として出席せねばならない事もあるだろう。


……はたして…自分はやっていけるのだろうか。


『蒼麒と一緒にいたい』と、ただそれだけの感情で安易に考えていたけれど、ひょっとして自分の考えは間違っていたのか…。


何故だか急に冷たくなった指先をぎゅっと握って、微かに震える身体を自分で抱き締める。


「和!!大丈夫!!」


翡翠のそれは全く根拠の無い自信だったけれど、今の和輝にとっては唯一の救いだから…彼は幼馴染みに小さく笑顔を作ってみせた。








コンコン。


翡翠がうなずくのを見た和輝は、大きな深呼吸をひとつすると意を決したように扉へ向かう。


「ごきげんよう」


開かれた扉の先には、年端の経たオバチャンなどではなく…まるで大輪の花が咲いたかのような、こぼれるような微笑みを浮かべた美しい少女が1人、凛としてそこに立っていた。

きゅー→←なな



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
32人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:芥子 | 作成日時:2017年4月20日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。