いち ページ21
南国特有の風が開け放たれた大きな窓から軽やかに吹き込んで、真っ白なレースのカーテンがふわりと舞い踊る。
何処からともなく漂ってくる花の甘い香り。
聞こえてくる楽しそうなハミング。
暗くて深いところまで沈みこんでいた意識が段々と明るい方へ向かって浮上してきたのを、彼は嫌々ながらも自覚していた。
しかし、それでも目を開くことを拒絶し、このままの状態を保ちたいと願う彼の耳に、大好きな幼馴染みの…どことなく舌足らずだけど優しい歌声が聞こえてきて…和輝はそちらに意識を向けた。
…………♪
ふふふふ〜ん (ころがり)
ふふふふ〜ん(壊して)
らんららんらら〜ん (草むしり〜)
………日本人なら殆どの人が知っているだろう、姉妹にどんぐりをくれる不思議な生き物が出演した国民的人気アニメ映画のオープニングソングに似ているようだが…。
訳の分からない無駄な合いの手が入っているのがどうしても気になって。
「…………何で『壊して』『草むしり』なのよ…」
「あっ!!かずっ!!気が付いた!?……よかったぁ」
うっすらと開いた目に最初に映ったのは、美しい碧色の瞳を持つ幼馴染みの泣き笑いしたような…でもいつもの昔から変わらない綺麗な笑顔だった。
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作者名:芥子 | 作成日時:2017年4月20日 12時