にじゅうさん ページ15
夏の朝日が程よく射し込むラウンジには、芳しい珈琲の薫りが漂っている。
ちょうど……翡翠がチャリンコで嫌がる和輝を後ろに乗せて爆走をしはじめ…蒼太サマが自分のあてがわれたスイートルームに置いてあるキングサイズのベッドに敷かれた真っ白なシーツをランチョンマット代わりにして、甘くて蕩けそうな妖艶にして美味なる最高級の『御食事』を思う存分堪能されていた頃であろうと思われる……そんな時間。
ほぼ徹夜で今日の段取りやら打ち合わせを済ませた蒼麒、紅音、紫峰の3人は、ようやくゆっくりと椅子に座り、珈琲の豊かな香りを楽しみながら懐かしい話に花を咲かせていた。
南方にあるこの小さな島は奥山家の個人所有の島で、紅音や紫峰は幼いころから度々遊びに来ていた馴染み深い場所である。
周囲は5キロほどであるが、自然は豊かで海は美しく、保養地としては最高ランクに値する。
高台に建つこの白亜の大きな屋敷は宿泊施設も併設されていて、会社にとっての超VIPをもてなす時にも使用されている。
自宅とは違って開放的な雰囲気の上、急きょ聡子サマの感性による仕様に変えられたから十二分に華やかさも加えられていて…結婚式を催すにはうってつけのロケーションであろうと思われた。
「2人ともさ、ここに来るのは久しぶりじゃない?」
「そういえばそうかも。子供の頃はよく来てたけど…」
「アレ以来じゃないか?紅さんが探検ゴッコの最中に行方不明になった…」
「あったあった!!紅くんさ、森に迷いこんじゃって、小さな洞窟んなかで泣きながら寝てた所を発見されたんだよね♪」
「…………もう…お願いだから、その話は忘れてよっ!!」
子供の頃の恥ずかしい話に紅音は少し膨れっつらを作り、その顔を赤らめた。
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作者名:芥子 | 作成日時:2017年4月20日 12時