私を助けて�� ページ12
メキメキッと音を立ててだんだん生えてくる下半身。
「…んっ」
だけど痛みは引かないし
血肉を食べてない分回復は遅い。
「はあ、はあ」
それにさっきからやっぱり血の匂いに敏感に反応してしまう。
甘い香り。
やっぱり私は…
「大丈夫かァ」
「実弥さん、ありがとう」
鬼を倒してくれた実弥さんにそう言うと何も答えずに私の体を持ち上げた。
「わあっ、なに？」
「…よかった」
「え？」
ぎゅうっと回復中の私を抱きしめた実弥さん。
抱き上げられてるから顔が近くて恥ずかしい。
「間に合って…よかった」
こんなに弱々しくて壊れそうな実弥さんを私は見たことがない。
ため息混じりな声はどれほど私を心配してたかが良く分かる。
「実弥さん…」
「蝶屋敷まで連れてってやる」
「…だめです」
「なんでだァ」
私は自分がすごく怖い。
だから帰れない。
「冒険がしたくて」
見え見えな嘘だと思う。
だけど笑顔を作ってそう伝えた。
「馬鹿かァ」
「なっ！失礼ですね」
「…まァいい、傷が治るまでは家に泊まれェ」
そう言って私を肩に担いで運ぶ実弥さん。
…拒否権はないって事ね。
きっと嫌って言っても離してくれないだろうし諦めよう、早く治せばいい。
・
しばらく担がれてると着いたらしい。
「しっかり寝ろよ」
「…うん、ありがとうございます」
布団を敷いてくれてご飯まで出してくれて
至れり尽くせり。
体も太ももまで生えてきたから起きるときにはもう回復は終わってるだろう。
「じゃ、俺は隣の部屋にいるからなァ」
「…実弥さん」
思わず引き止めてしまった。
「私が、もし他の鬼みたいになったら…」
"どうしますか"なんて言っていいのか。
ただ自分が堕ちてしまいそうで怖い。
「そん時はお前を斬る」
真っ直ぐ私の目を見る実弥さん。
「…って言いてェけど、出来ねェかもな」
「…」
「お前には誰も襲わせねェよ」
しっかり私の目を見たままそう言った。
強い声で。
「…ありがとう」
その言葉に少し安心した。
この人は私をいつも助けてくれるんだ。
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作者名：enen♪ | 作成日時：2020年5月1日 21時
