私を助けて�� ページ11
「ぐあああっ！！」
後少しまで斬られかけた時、鬼が悲鳴をあげた。
離された体がバランスを崩して前に倒れる。
「…はあ、はあっ」
痛くて仕方ない身体中。
今にも千切れそうな首をグッと胴体に押さえつけて後ろを振り返った。
胴と脚が泣き別れになった鬼。
「…ッ」
「許さねェ」
そこにいたのは鬼を睨む実弥さん。
「この僕の体を傷つけるなんて…！」
「A。大丈夫か」
鬼の言葉を無視して私の元まで歩いて来た実弥さんは目線を合わせてそう言った。
「…っごめんなさい」
「なんで謝んだ」
「だって、私、何も出来なかった…っ」
安心と罪悪感でボロボロと涙が溢れ出た。
「鬼なのに、私…鬼なのに」
「馬鹿野郎」
ボカッと少し強めに叩かれた頭…
いや首落ちるって。
「…何するんですか」
叩かれた所を抑えてそう聞く。
殴るなんて酷い。
だけどその手が安心する。
「鬼だからとか関係ねェだろ」
「…でも」
「お前は人間だ」
覚えとけ。なんて言う実弥さん。
違うのに。
私は鬼で人間じゃない。
生身の身体で、傷も簡単に治らない身体で
命を張って戦う…そんな生き方も出来ないのに。
「いい加減にしてくれないかな」
実弥さんの後ろにフラッと現れた鬼。
体が震える。
死んでもいいって思ってたはずなのに
死にたくない。
「テメェは黙ってろ。このゴミ屑がァ」
私を見たまま鬼に見向きもしない実弥さん。
鬼の私よりもはるかに大きい身体。
その腕に手を当てた。
「…実弥さん」
「どうしたァ」
「私、まだ死にだぐない」
鼻水も涙もヨダレも全部出た。
嬉しくて悔しくて。
生きていたくて。
「私を助けて…ッ」
「任せとけェ」
嬉しそうに笑った実弥さんは鬼に向かって行った。
涙で上手く前が見えない。
だけど実弥さんなら大丈夫って分かる。
「カアア。大丈夫カ」
戦闘中だというのに私の側に来たカラス。
「実弥さんを呼んできてくれて、ありがと」
「何ノコトダ」
なんて言うカラスの頭を撫でた。
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作者名：enen♪ | 作成日時：2020年5月1日 21時
