予期しない状態が発生しました【Bs63/21】 (ページ10)

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Aside

今日は大人しくしていようと、不安な気持ちで品出しをしていたのだが急に自身の前が大きな影に覆われた。

「名前教えていただけませんか」

困惑で頭がショートしかけた。情報が処理しづらいほど急展開だった。

私の真後ろに巨体が立って、見下ろしている。目が怖い、濁っている。隈がひどい顔だった。
商品棚と彼に挟まれて、まさに壁ドンされそうな状態だった。

『？！、、、えっ、あ、A、Aです、、、』

距離が近い、逃げられない、怖い。泣きそうな感情を堪えて勇気を振り絞って名前を口にした。

「明日、お話しませんか？」

『え、え、、いい、ですけど、、、』

急展開すぎて本能的に承諾してしまった。断ったら”やられそう”な雰囲気をしていた。

彼は満足したのか、目を細めながらかすかに微笑んで、出て行った。

急展開だったが、いくらか冷静になった頭で考えてみると、イケメンと会話できるチャンスだと思った。

Aは物事をポジティブに考える傾向があるので、あまり気にしていなかった。

◇・◇・◇

詳細を聞いていないので、いつもの時間でコンビニの横で待っていると、彼が現れた。

「すいません、急に呼び出してしまって」

『、、いえいえ』

「僕、山﨑颯一郎っていいます」

私服を身に纏った彼は以前の彼とは雰囲気がまったく変わって穏やかで、優しい口調だった。

気まずくならないように共通の話題を探したが颯一郎さんは饒舌で、でも少し抜けているとこもあって。ニコニコで話す彼に緊張を忘れていた。

今までの誤解を解いて話も盛り上がってきたので、私を誘うまでのきっかけを聞いたが「ただ気になっただけ」の一点張りで、それ以上は教えてくれなかった。

理由をもう少し聞きたかったが、私達はお互いに連絡先を交換しここでお開きとした。

「では、また」

『はい！楽しかったです、ありがとうございました』

私はスマホを胸元に持ち、満足した。彼が帰路につくのを確認すると、私はルンルンで帰宅した。

まさか、車の中から撮られていることは知らなかった。