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「あぁ、おはようございます、、」
なぜだ?なぜ彼女は怯えた様子なんだ?
彼女の様子が明らかにおかしいことは分かるのに、その原因が自分にあることが分からなかった。
しばらく怯える彼女を見つめてしまった。何らかの恐怖に染まったその瞳が美しすぎて、吸い込まれてしまった。
(俺の物にしたい)
ふと、無意識に欲求を満たしたくなっていた。俺を前にして怖気づく彼女はまるで獣に追い詰められた小動物みたいだった。
まるで俺が彼女を支配しているようで、興奮した。
一生その瞳を見ていたかったが、我に返った。
「わ、すいません、ついぼーっとしちゃって、、」
『や、、いえいえこちらこそお仕事お疲れ様です』
「はは、仕事で疲れが溜まりすぎてて、、まぁ、それでは」
彼女は気まずそうな表情を浮かべていたので、どうにか言い訳し軽く会釈してその場を離れた。
車に乗り込むとさらに興奮がこみ上げた。先ほどの彼女の表情は十分な興奮材料だった。
体が今”そういう状態”だと鬱陶しいほど分かってしまうので、何とか気持ちを誤魔化しながら会社へ向かった。
デスクについた途端に缶コーヒーを飲み、気持ちを切り替えてすぐに仕事に取り掛かった。
イライラと興奮が入り混じった雑念をなんとかかき分けて、今日も仕事を終わらせた。
18「今日は、昨日と違ってもっと怖い表情をしてんな」
「え、まじで?」
18「うん、なんか怖いオーラ出てる。話しかけようか迷ったもん。いつものそういちじゃないみたい。」
そこで、俺が今朝彼女を怯えさせた原因だと気づいた。
「あ、え、、そうなの」
正直イラついていたり雑念がすごかったが、まさか周囲に気づかれるほどだとは思ってなかった。
そんなことより、彼女を怖がらせてしまった事実に寒気がした。これほどまでの感情に駆られ、しかもその気持ちが彼女に伝わっていたら、、、。
制御が効かなくなってきた自分が怖い。”由伸に言われたこと”をほんとにしそうで怖い。
だが、ダントツで彼女に避けられてしまうという予想が一番怖かった。冷や汗が出た。
「、、っは、おれ、、もしかして、、」
18「え、おいおい大丈夫?そーいちー?聞こえてるー?」
呼吸が浅い、鼓動がうるさい、胸騒ぎが大きくなってきた。俺はこの感情をどこへぶつけようか考えているうちに由伸を差し置いて駐車場へ走り出していた。
18「え?!そーいち!」
由伸は行く手を遮ることもできず、立ち去られてしまった。
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作者名:塩分過多 | 作成日時:2023年12月27日 23時