寒い ページ16
「、、、」
18「あっ、、そういち、、別にこれはっ、、!」
颯一郎は一言も喋らず俺を見つめる。もうここで終わりだと思った。全身が強張った。
が、颯一郎は特に何もせず自らボードをまた引き出した。
「いつ言おうか迷ってたけど、やっぱり由伸にはバレちゃうか」
18「、、、え?」
颯一郎はやけに冷静で、俺の横で愛おしそうにボードを見ている。この状況が気色悪い。俺はもう何も考えられなかった。
「ねえ、よしのぶ」
「俺の恋、手伝ってくれるよね?」
颯一郎が、無邪気な満面の笑みで言った。その発言に俺は肯定するほかなかった。
それからというもの俺は颯一郎の家を頻繁に訪れるようになり行動を共にすることが多くなった。
それは”友達”として、共犯者として。”颯一郎の恋の応援”をさせられた。
今日は、Aの隣の住民を消した。手際よく処理する俺の手は真っ赤に染まった。
でも、颯一郎の喜ぶ顔が見れてよかった、友達として。
◇・◇・◇
Asaid
今日はついに颯一郎さんの家に行く日だ。はやる気持ちを抑えて、特定の部屋まで足を運ぶ。インターホンを押すと、彼が出てきた。
「いらっしゃい、くつろいでいってね」
『あ、お、お邪魔します』
借りてきた猫状態で用意された座椅子に座る。
はじめて上がる部屋をちらちら見渡していると、彼がコーヒーを淹れたカップといくらかの洋菓子を添えた皿を運んできた。
「口に合うといいんだけど、、」
そういって彼が持ってきたものを口にする。これらの洋菓子は彼の手作りだそうだ。
『わ、、!とってもおいしいです!』
「そっか!よかった」
私は、あまりのおいしさにもぐもぐと食べ進めた。ちょっとがっつき過ぎたかと思い、彼の顔を見ると頬杖をついてカップを片手に微笑んでこちらを見ていた。
「よろこんでもらえて、嬉しいよ」
そう言いながらまた更にはにかむ彼の端正な顔にキュンとした。
◇・◇・◇
しばらく会話した後、彼にある相談事をした。
「身の回りで失踪事件が相次いでいる?」
『ええ、そうなんです。だから、その、、怖くて、、、』
最近、ご近所さんが失踪してしまった。しかも、もれなく全員私に親切にしてくれた人たちだった。
しかも、昨日は隣の住人が忽然と消息を絶ってしまったらしい。
なんとも気味の悪い事象に耐え切れず、颯一郎さんに慰めてもらおうと思った。
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作者名:塩分過多 | 作成日時:2023年12月27日 23時