はじまり ページ1
_君に出会わなければこんなに苦しまなくて済んだのに
仕事に向かうまでの通勤手段は車で、今日は毎日のルーティーンであるコンビニに向かった。
いつも使っているコンビニは利用客が少ないためガラガラしている。出勤時間が早いという理由もあるかもしれないが。
(あ、いつものコーヒーがない)
毎日買っている缶コーヒーが今日という日に限って品切れしていた。
”いつものコーヒー”は特別感があり、別のメーカーの缶コーヒーで妥協しようという考えは嫌だった。しかも、週のど真ん中の水曜日のスタートダッシュが他のコーヒーなんて、、、と温かいドリンクが並ぶショーケースの前で考えていると一人の従業員が話しかけてきた。
『すみませんお客様、品を入れ替えますので前失礼します。』
「、、、っあ、すみません」
ぼーっとしていた俺の前に小柄な従業員が見上げていたのでびっくりした。
従業員の邪魔にならないように一歩半下がった俺は彼女が持ってきた在庫の段ボールがいつも飲んでいる缶コーヒーのメーカーだということに気づいた。
「あ、そのメーカー、、、」
『?この缶コーヒーですか?』
「あっ、ええ、その缶コーヒーが好きなのでひとつ頂けますか」
『あ、どうぞ』
「ありがとうございます」
『そのメーカーのコーヒー私も好きです』
そう受け取ると彼女は大きな瞳でこちらを見て言った。その瞬間体に感じたことのない衝撃が走った。
『私、一日のはじまりがこの缶コーヒーじゃなきゃ受け付けないというか、、中毒性があるというか、結構お気に入りなんですよ』
「、、、そうなんですね」
彼女と視線が交わった瞬間胸騒ぎして正直おどろいた。しかも、彼女はこの缶コーヒーが好きらしい。俺と同じだ。
『あ、すいませんお急ぎの中はなしかけちゃって』
「いえいえ、こちらこそこのコーヒーが飲みたかったので丁度品出しして頂けてよかったです」
「それでは」
『はい!お仕事がんばってください!』
彼女は無邪気な笑顔を向けた。まるで一輪の花が咲いたような。
彼女に話しかけられてから自分の様子がおかしい、感じたことない電撃に打たれたような、彼女に向けられた笑顔にやられたみたいだ______。
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作者名:塩分過多 | 作成日時:2023年12月27日 23時