アレはオレらの【宮侑/宮治】

「遊び行こや」 ページ19

.



オフはインハイ前に比べれば増えたが
それでも強豪校のオフは他校に比べれば少ない。
休日は遠征や練習試合のスケジュールで一杯。

故にテスト前とはいえ、部活が早く終わる機会は強豪の部活動生にとって絶対に無駄にできない。

時刻はまだ、昼と夕方の間。
いつものバス停に侑とA。治はいない。
普通に帰った一般生徒はいないが
同じ時間帯に終わった部活動生がチラホラいる。

・
・

「A」

前の席、二人用の席の外側に座る侑の
穏やかな声が窓側に座るAにだけ聞こえる。
それに反応したAが侑に視線をやると
左手は頭、右手はスマホを触っていて

「水道んトコで角名となに話しとったん」

とその姿勢で続けた。

宮の隣に普通に座って、普通の会話をする。
Aにとってはごく当然のことだが
後ろに座る女子生徒や彼のファンからすれば
羨ましいことこの上ない光景。


『倫太郎がようモテるって話やで。手洗い行ったら倫太郎一年の子に告られとってん』

「あいつ呼び出されてついていったん？」


その疑問は角名をよく知っていることを証明する。


『一年てあれやで。マネージャーやで、うちの。水道行ったらおってんて』

「怖。誰？」

『侑が一年のマネージャーん中で一番可愛い言うてた子やん』


俺そんなん言うた？と言いたげな顔で
記憶を探る侑は、無意識的にスマホに向けていた
顔を上げ、バスの天井に。思い出せない。
可愛いと思って言ったのではなく、
一番マシという意味で言ったセリフを。

「覚えてへんけど、うちのマネージャー顔面偏差値みんな中の下やろ。三年なんか下や」

……Aは思う。
それ本人達の前で絶対言うなよと。

幸い彼は空気が読めるし、もし言うとしたら
わざと(・・・)しかありえない。
それも、自分の感に触るような事を
された時のみなのでその心配は要らないだろう。

けれどAはどちらでもいいとも思った。
彼が誰かをどう思い、悪口を言おうが好きに
なろうが幼馴染という関係はいつになっても
変わらないし譲る気もないのだから。


「つっこまんの?」


…と考えていると、侑がこちらを向いてニコリと笑う。彼が言いたいのは、

"うちのマネージャー顔面偏差値みんな中の下やろ"

に対して、言葉通りならAが含まれているのに突っ込まないのかということだが、Aは何のことと言わんばかりに首を傾げる。


「うちのマネージャーみんなて言うたやん、俺」



.

「あんまイキんなや」→←マネージャーの仕事7(角名)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す